生ごみメタン発酵消化液の特別栽培小麦への追肥利用と散布機の開発


[要約]
生ごみ原料メタン発酵処理残さ液(消化液)は、特別栽培の小麦への追肥効果が鶏ふんより高く、収量の向上、粗タンパク質が向上する。消化液の小麦追肥散布機を試作し作業可能面積を試算した。

[キーワード]コムギ、生ごみ、メタン発酵消化液、追肥、特別栽培農産物、散布機

[担当]埼玉農総研・生産環境担当
[連絡先]電話048-521-9461
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 埼玉県小川町では、NPOと行政が協力した生ごみのメタン発酵処理が行われ、その残さ液(消化液)の農業利用が望まれている。一方、同町の麦作集団は特別栽培農産物認証の無化学肥料小麦栽培を取り組んでいるが、追肥用の有効な有機質資材が無く、低収、粗タンパク質含量の低下が問題となっている。
 これらの問題を複合的に解決するため、(1)消化液の特別栽培小麦の追肥としての肥効を明らかにする。(2)さらに現場で製造できる追肥散布機を試作して作業可能面積を明らかにする。これらにより地域の未利用有機資源の特別栽培への有効利用計画策定に資する。

[成果の内容・特徴]
1. 生ごみを原料としたメタン発酵消化液は、1700ppm程度の全窒素を含み、その85%以上はアンモニア態である(表1)。
2. 埼玉県の小麦施肥基準の追肥窒素2kg/10aを消化液で施用するための散布機を試作した。市販資材を組合わせたテーラ搭載型4サイクルガソリンエンジンポンプ吐出500?容タンクの散布機である。農業者にも簡易に製造できる(図1)。
3. 試作した散布機は動力噴霧機のように消化液のSSが詰まることはない。30cm幅8頭の噴口により小麦植物体の葉面散布と土壌への散布を兼ねる。圃場作業量はおよそ20a/時である。本機による小麦の追肥作業可能面積はおよそ12haであり、消化液120k L消費分に相当する(表2)。
4. 小麦農林61号の消化液の追肥効果は高く、慣行追肥の鶏ふんに比べ、収量、粗タンパク質含量が明らかに向上する。消化液窒素の窒素吸収量は葉面散布でもあり非常に高い(表3)。
5. これらから、開発した生ごみ原料メタン発酵消化液の小麦追肥散布機を利用した追肥技術は、特別栽培農産物認証に対応できる有効な技術である。本技術による作業可能面積と消化液の必要量が明らかにされた。

[成果の活用面・留意点]
1. 小麦の特別栽培における非常に有効な追肥資材である。
2. 作業負担面積の試算は、散布作業と消化液運搬補充作業の組作業による。
3. 消化液の窒素濃度は若干変動するので散布事前に全窒素若しくはアンモニア態窒素濃度を測定し散布量を決定する。散布時の臭気は、pHを7.0程度に低下させると軽減する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:未利用有機資源の農業利用転換技術の開発
予算区分:土壌保全
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:佐藤一弘、相崎万裕美(戦略プロジェクト第2研究担当)、日高伸

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