牛ふん炭化物の肥効特性と多量施用及び除塩の影響


[要約]
牛ふん炭化物は、含有成分のリン酸及びカリがコマツナ栽培において化学肥料代替効果がある。ただし、pHとECが高いので多量施用した場合に砂質土では生育低下が起こる。生育低下は除塩で軽減される。主な溶脱成分はカリウムと塩素である。

[キーワード]牛ふん炭化物、リン酸、カリ、除塩、コマツナ、黒ボク土、砂質土

[担当]千葉農総研・生産環境部・環境機能研究室
[連絡先]電話043-291-9995
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 千葉県では、畜産系からの年間窒素排出量が26,200tと多いため、地下水の硝酸汚染が懸念されている。また、農耕地の窒素収支から、畜産排泄物の新たな堆肥化による農地還元は限界に近づき、4,300tの余剰窒素が未利用となり、不適切な処理による硝酸汚染の危険性が増大している。そこで、主な畜産排泄物である牛ふんを炭化によって窒素を削減させ、同時に含有物のリン酸及びカリを有効に利用する農地還元技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 500℃で炭化した牛ふん炭化物は、pHとECが高く、通常の木炭と比べて全炭素(T-C)含量が27%と著しく少なかった。肥効成分では、リン酸及びカリ含量が高く、いずれもク溶性成分が主体であった。副次成分では、塩素イオンが顕著に多かった(表1)。
2. 牛ふん炭化物の施用量を、リン酸の成分量で化学肥料標準区(N:P2O5:K2O=15:15:30)の1倍、3倍、6倍でコマツナを栽培(1/5000ワグネルポット)した。黒ボク土(表層腐植質黒ボク土)では6倍の施用量まで地上部と根部の生育が標準と同等であり、リンとカリウムの植物吸収量も施用量に伴って増加(データ省略)し、肥効が認められた。一方、砂質土(中粗粒褐色低地土)でも1倍の施用では同様の肥効が認められたが、3倍以上では生育低下が起こり、肥効が低下した(図1)。
3. 砂質土における牛ふん炭6倍施用時のコマツナの生育低下は、施用土壌の除塩を行うと軽減された(図2)。一方、黒ボク土では生育低下は起こらなかったが、塩類の土壌蓄積は顕著で、除塩によってもほとんど改善されなかった。
4. 牛ふん炭6倍施用土壌の除塩時の溶脱塩類は、主にカリウム及び塩素であった(表2)。牛ふん炭化物多量施用時のコマツナの生育低下は、これら高濃度の水溶性塩類の影響と推定された。

[成果の活用面・留意点]
1. 土壌診断を行い、カリ過剰にならない範囲で施用する。
2. 黒ボク土でも標準の7.5倍以上の施用で生育低下が発生するので注意する(発表論文参照)。
3. 炭化温度(400〜800℃)の違いによるリン酸とカリ含量の変化は小さい(独法農工研、2003年)。
4. 牛ふん炭化物には、窒素肥効が殆どない(熊本農研成果情報、1998年)


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:再資源化物の農地還元における環境影響評価
予算区分:農林業未利用資源リサイクル研究推進事業(県単)
研究機関:2001〜2005年度
研究担当者:真行寺孝、松丸恒夫
発表論文等:松丸・真行寺(2005)土肥誌 76:53-57.

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