土壌還元消毒に伴う残存無機態窒素量を考慮した葉菜類の減肥


[要約]
土壌還元消毒により土壌のアンモニア態窒素が増加し、無機態窒素量は太陽熱消毒に比較し約3倍増加するが、可給態窒素量は処理により減少する。コマツナ等の栽培では、土壌還元消毒後は作付け前に土壌診断を行い、土壌のアンモニア態窒素を含めた残存無機態窒素含量を考慮して施肥を行うことにより減肥が可能である。

[キーワード]土壌還元消毒、無機態窒素、麦フスマ、米ぬか、菜種油粕、土壌診断

[担当]神奈川県農技セ・ 農業環境研究部
[連絡先]電話0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 土壌還元消毒は化学合成農薬を用いない土壌消毒方法として注目されているが、このとき麦フスマ等の有機物の施用やかん水が行われる。これらの処理による土壌中の肥料成分への影響や作物の生育に対する影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 麦フスマ等の有機物を埋設して土壌還元消毒を行ったところ、最初の1週間では菜種油粕が最も早く分解し、次に麦フスマ、米ぬかの順で分解が進んだ。これらの有機物に含まれる炭素は4週間(データ未掲載)、窒素は8週間で約80%が放出される(図1)。標準的な処理である麦フスマ(1t/10a)施用時の窒素供給量は25kg/10aで無機化量は20kg/10aと推定される。
2. 土壌還元消毒により土壌のアンモニア態窒素は乾土100g当たり平均で6.2mg増加し、無機態窒素量(硝酸態窒素とアンモニア態窒素の合計)は、太陽熱消毒に比較し約3倍に増加する(表1)。
3. 可給態窒素量は土壌還元消毒により、乾土100g当たり約3mg減少し、太陽熱消毒では約2mg減少する(表1)。よって、土壌還元消毒後に、処理した有機物から無機化する窒素の影響を施肥量に反映する必要はない。
4. 現地圃場の土壌還元消毒では表層より15cmから30cm深でECや硝酸態窒素が増加する。ここでも、アンモニア態窒素が増加し、0cmから15cmで大きく増加する(表2)。
5. コマツナおよびホウレンソウの栽培において、土壌消毒処理後には土壌中の残存無機態窒素を考慮して減肥を行っても収量に有意差は生じない。栽培跡地の土壌には太陽熱消毒より土壌還元消毒で硝酸態窒素が多く残存する(表3)。よって、土壌還元消毒後のコマツナ等の栽培では、土壌中の残存無機態窒素含量を考慮して減肥を行うことが可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. 太陽熱消毒に比べて土壌還元消毒後は土壌の無機態窒素が増加するため、土壌診断は土壌還元消毒後で作付けのための施肥直前に行い、施肥量を調節する必要がある。
2. 土壌還元消毒後に行う土壌診断では、表層から深さ30cm程度までを考慮する必要があり、消毒処理直後であればアンモニア態窒素の評価を含める必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:地域環境保全対策のための土壌管理技術の開発
予算区分:土壌保全
研究期間:2004年度
研究担当者:岡本昌広(病害虫防除所)、伊藤喜誠

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