耐倒伏性が強く、品質が高い水稲早生粳品種「ゆきん子舞」の育成


[要約]
「ゆきん子舞」は、新潟県では早生の中間型に属する粳種である。耐倒伏性が強く、品質も高いことから、地力窒素の発現が大きい転作跡の圃場において安定した栽培が可能である。

[キーワード]イネ、ゆきん子舞、早生、粳種、転作跡

[担当]新潟農総研・作物研究センター・育種科
[連絡先]電話0258-35-0047
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 新潟県における転作作物の主力は大豆である。転作跡の水田は地力窒素の発現が大きく、作付け品種が制限される。そのため、地力の高い条件に適応した耐倒伏性に優れる品種を開発し、転作跡の水稲の安定栽培を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 「ゆきん子舞」は、新潟県農業試験場(現新潟県農業総合研究所 作物研究センター、長岡市)において、1989年(昭和63年)に「山形35号」(後の「どまんなか」)を母親、「新潟20号」(後の「ゆきの精」)を父親に用いて人工交配し、以後系統育種法により選抜固定を図り育成した品種である。1994年(平成6年)から生産力検定および特性検定を行い、2000年(平成12年)には「新潟71号」の系統名を付し奨励品種決定調査に供試した。2004年(平成16年)で雑種第16代である。
2. 出穂期および成熟期は、「ゆきの精」よりも3日程度早い早生の粳種である。葉身および葉鞘の色は「ゆきの精」に似た淡緑色である。草型は“中間型”、稈長、穂長および穂数は「ゆきの精」並である。やや短い芒が少程度生じ、ふ先色は“黄白”、脱粒性は“難”である(表1)。
3. 稈は“やや太”く“やや剛”で耐倒伏性は“強”、穂発芽性は“易”である。いもち病真性抵抗性遺伝子型はPia,iと推定され、圃場抵抗性は葉および穂いもちともに“中”である(表1)。
4. 収量および千粒重は「ゆきの精」並である。玄米の外観品質は「ゆきの精」よりも優れ「こしいぶき」並、食味は「ゆきの精」より優れるが、「こしいぶき」より劣る。炊飯米の光沢を示す食味評価値(味度)および玄米のタンパク質含有率は「ゆきの精」並、アミロース含有率は「ゆきの精」より高い(表1)。
5. 多肥条件における「ゆきん子舞」の耐倒伏性は、「新潟早生」より劣るものの、「ゆきの精」「こしいぶき」および「あきたこまち」よりも強い。玄米の外観品質は、「ゆきの精」「こしいぶき」「あきたこまち」および「新潟早生」より優れる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 種子対策品種として、2006年(平成18年)より高標高地(400m以上)を除く県内全域に普及を図る。普及対象面積は3,000haである。
2. 大豆などの転作跡に栽培する。
3. 穂発芽し易いので、倒伏を助長するような過度の多肥多収栽培は避ける。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:水稲の基幹新品種の育成
予算区分:県単経常
研究期間:1997年〜
研究担当者: 石崎和彦、金田智、松井崇晃、星豊一、佐々木行雄、阿部聖一、東聡志、阿部徳文、近藤敬、樋口恭子、小林和幸、重山博信、平尾賢一
発表論文等:2004年度品種登録出願、第18055号

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