水稲品種「イクヒカリ」の形態の特性


[要約]
短稈で良質多収の偏穂重型品種である水稲「イクヒカリ」は、物質生産や転流に有利な草型をしている。また、根数や根重が大きい。特に、株直下の根群形成が優れている。これらの形態的特性が多収要因のひとつと考えられる。

[キーワード]イネ、イクヒカリ、草型、根群形成、地上部乾物重

[担当]福井農試・作物・育種部・作物研究グループ
[連絡先]電話0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 水稲「イクヒカリ」は、出穂期、成熟期ともにコシヒカリ並の中生品種である。またコシヒカリに比べ穂数は少ないが、粒重は大きい。短稈で倒伏しにくく、収量性は高い。また、炊飯特性では、良食味で冷めても軟らかいという特徴がある。今後の品種育成と栽培改善に資するため、イクヒカリの形態的特徴から多収を支える要因を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. イクヒカリの出穂後の草型は、穂の位置が止葉よりも低く、止葉が立っていて、草冠 部が葉身で覆われている。また、葉身の乾物重が多い層も70〜80cmと比較的高く、光合 成活性の高い上位葉の割合が高いことが推察される。さらに稈基部の乾物重が大きいことから、茎が太く倒伏抵抗性が大きい(図1)。このように、イクヒカリは乾物生産や転流に有利な草型をしている。
2. イクヒカリは根張りが良く、特に株直下の根張りが良い(図2)。また目視ではあるが、根が太い傾向も観察されている。幼穂形成期では根数や根重はコシヒカリより大きい。その後、両者の差は小さくなり、登熟後期では差はみられない(図3)。
3. 幼穂形成期の地上部乾物重はイクヒカリとコシヒカリの差は小さいが、出穂期以降、イクヒカリがコシヒカリを上回る(図4)。また、穂重は登熟中期以降、その差が大きくなる(図4)。
4. 以上の地上部および地下部の特性が、イクヒカリの多収性を支える形態的要因と考えられる。

[成果の活用面・留意点]
1. 登熟後期の穂重増加程度が大きいので、圃場の常時湛水や過度の乾燥など根群発達を 阻害するような水管理、穂肥が少なく登熟期間の葉色低下が大きいなど登熟期の稲体活 力低下は避ける。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:奨励品種決定調査
予算区分:県単
研究期間:1998〜2005年度
研究担当者:土田政憲、笈田豊彦、山田実、井上健一

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