食品残さ堆肥の腐熟度指標


[要約]
食品残さ堆肥において作物に障害を来さないための腐熟度指標値(コマツナ発芽率80%以上)は尿素添加の有無にかかわらず抽出性炭素:12500mg/kg以下、揮発性有機酸(酢酸当量):300mg/kg以下である。

[キーワード]食品残さ堆肥、腐熟度指標、抽出性炭素、揮発性有機酸

[担当]石川農総研・資源加工研究部・生物資源グループ
[連絡先]電話076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 食品残さリサイクルの推進には堆肥化による農地還元が有効な手法であるため、堆肥化の際に尿素等窒素源を添加する場合があるが、その際の腐熟度指標は明らかにされていない。そこで、各種濃度で尿素を添加した食品残さ堆肥について抽出性炭素(EOC)及び揮発性有機酸(VOA)による腐熟度指標値を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 食品残さ堆肥(現物重量比で給食残さ:魚加工残さ:おから:籾殼= 1:1:1:1.5の割合で混合したもの)に各種濃度で尿素を添加した場合、コマツナの発芽率は堆肥の腐熟進行にともない高まる。また、発芽率は尿素添加量の増加にともない抑制される傾向にある(図1)。なお、発芽率は20℃で対照(蒸留水)が100%に達した時点における堆肥現物の熱水抽出液(堆肥乾物当量:水=1:20)の値である。
2. EOCは20倍量の0.2mol/L硫酸で抽出後、重クロム酸分解法で、VOAは10倍量の2mol/L塩化カリウムで抽出後、水蒸気蒸留法で測定する(図2)。なお、EOC及びVOAの値は、堆肥現物で測定後水分補正した乾物当量である。
3. EOCとVOAの間に高い相関関係が認められるとともに、発芽率はEOC及びVOAの低下にともない向上する(図3図4)。
4. 尿素添加量にかかわらず、安全な堆肥の指標値(発芽率80%)はVOA(酢酸当量): 300mg/kg、EOC:12500mg/kgであると考えられる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. EOCの測定は 畑中:平成16年度関東東海北陸農業研究成果情報III:266p VOAの測定は 高橋・柾木:平成14年度関東東海北陸農業研究成果情報T:6p 発芽率の測定は 日本土壌協会:堆肥等有機物分析法 に準じた。
2. EOCは堆肥中の未分解成分の一部で、糖類・タンパク質等の高分子成分及びその代謝産物を含み、代謝産物の一部はVOAである(図5)。
3. EOC及びVOAともに尿素添加の有無にかかわらず腐熟度指標として有効であるが、EOCよりもVOAの方がクロムを使用せず、安全かつ有害廃液を生じない点で優れている。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:食品残さを利用した新しい作物別有機肥料の開発
予算区分:国補
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:梅本英之、島田義明

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