肉用牛における濃厚飼料中の適正な分解性蛋白質割合


[要約]
黒毛和種去勢牛に給与する濃厚飼料中の分解性蛋白質割合を前期70%程度、後期60%程度とすることにより、ばらの厚さ、締まり、締まり・きめ等級および肉質等級等が良好で、経済性も向上する。

[キーワード]肉用牛、分解性蛋白質、経済性

[担当]群馬畜試・大家畜研究グループ
[代表連絡先]電話:027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  肉用牛では第一胃内での蛋白質の分解と再合成を効率よく進め、飼料摂取量と飼料エネルギーの利用効率を最大にするためには飼料乾物中粗蛋白質含量を12%前後にすることが必要であるとされている。飼料中の粗蛋白質は第一胃内での特性により分解性蛋白質(以下CPd)と非分解性蛋白質に分別されるが、CPdに関する報告は少ない。そこで、黒毛和種去勢牛における濃厚飼料中の適正なCPd割合を究明するために試験を実施する。

[成果の内容・特徴]
1. 黒毛和種去勢牛12頭を供試し、濃厚飼料の乾物中粗蛋白質割合を前期(8〜18カ月齢)19%、後期(18〜28カ月齢)15%とし、CPdを70%程度の高分解区と60%程度の低分解区を設定し、前期36週、後期38週の肥育試験を行なう。
  試験区分は、前期を高分解区(n=6)、低分解区(n=6)とし、後期はそれぞれを高分解区(n=3)と低分解区(n=3)に組み替える。
2. 飼料は、高分解区は大麦、トウモロコシ、フスマ、大豆粕およびミネラルを使用し、低分解区は大豆粕の代わりにコーングルテンミールを使用した。濃厚飼料は前期制限(5〜9kg)、後期飽食、粗飼料はチモシー乾草(前期90日)と稲ワラを飽食とする。
3. 飼料摂取量および発育は、CPd割合の違いによる差は見られない(表1)。
4. 濃厚飼料中の分解性蛋白質割合を前期70%程度、後期 60%程度とすることにより、バラの厚さ、締まり、締まり・きめ等級および肉質等級等が良好で、1日増加額も大きくなり、経済的にも有利である(表2図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 自家配合を実施している肥育農家および飼料製造メーカーで活用できる。
2. 飼料は濃厚飼料と粗飼料を分離給与とする。
3. 1日増加額は、(販売金額−飼料費)÷肥育日数から算出する。
4. 飼料単価は、高分解区濃厚飼料を前後期とも39円、低分解濃厚飼料前期40円、後期39円、チモシー乾草49円および稲ワラ40円とする。


[具体的データ]

表1 飼料摂取量および日増体量
図1 1日増加額
表2 枝肉成績

[その他]
研究課題名:蛋白質の第一胃内分解性の違いが黒毛和種去勢牛の産肉性に及ぼす影響
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:浅田勉、藤井香織、金井福次

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