肉用奥美濃古地鶏の雌種鶏における黒色羽装ひな発生防止技術の開発


[要約]
肉用奥美濃古地鶏の雌種鶏(白色プリマスロック種雄とロードアイランドレッド種雌とのF1)における黒色羽装ひなの発生は、父系の白色プリマスロック種から茶色羽装を発現する遺伝子を保有する個体をDNAマーカーを利用した識別法で識別・選抜することで防止できる。

[キーワード]肉用奥美濃古地鶏、雌種鶏、黒色羽装、MC1R、DNAマーカー

[担当]岐阜畜研・養鶏研究部
[代表連絡先]電話:0575-22-3165
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  褐色羽装の肉用奥美濃古地鶏の雌種鶏は、白色プリマスロック種(WPR)の雄とロードアイランドレッド種(RIR)の雌との交配により生産されている。近年、この雌種鶏に黒色羽装ひなが発生するようになり、コマーシャル鶏の褐色羽装を確保するため黒色羽装ひなを全て淘汰している。そのため生産現場からは黒色羽装除去技術の開発が強く要望されている。鶏の黒色羽装に関係する遺伝子には黒色拡張遺伝子()があり、この座位の原因遺伝子はメラノコルチン1レセプター(MC1R)遺伝子として知られている。
  そこで、MC1R遺伝子の多型と羽装との関係を解析することで、黒色羽装を発現する対立遺伝子を特定し、この遺伝子保有個体を識別淘汰することで肉用奥美濃古地鶏の雌種鶏における黒色羽装ひなの発生の防止を目指すものである。

[成果の内容・特徴]
1. 肉用奥美濃古地鶏の雌種鶏の親に用いられる白色プリマスロック種(WPR)及びロードアイランドレッド種(RIR)の集団には、座位の4種類の対立遺伝子(R)とMC1R遺伝子に6箇所のアミノ酸置換を伴う一塩基多型がある(表1)。
2. ひなの黒色羽装の対立遺伝子は白色プリマスロック種に由来する及びで、茶色羽装の対立遺伝子は白色プリマスロック種に由来するである。なおロードアイランドレッド種に由来するを保有する/のひなには、茶色羽装の他に黒色羽装に似た黒褐色羽装(タイプ2)のひなが出現する場合がある。(表2)。
3. 3箇所の一塩基多型(Glu92Lys、Thr143Ala、His215Pro)を利用することで、座位の4種類の対立遺伝子を判定することができ、茶色羽装の対立遺伝子MC1R遺伝子のHis215Proで識別できる(表1)。
4. His215ProについてはPCR-RFLP法で、Glu92Lys、Thr143Alaについてはアリル特異的プライマーを用いたPCR法で判定できる。
5. の保有の有無をHis215ProのPCR-RFLP法で判定し、白色プリマスロック種の集団をに固定することで、黒色羽装を発現する及びを保有する個体が淘汰され、ロードアイランドレッド種との交配によるひなには、黒褐色羽装は出現する(6.6%)が黒色羽装は出現しない(0.0%)(図1)。
6. PCR-RFLP法による遺伝子型判定は後代検定による遺伝子型の判定に比べ、低コストで短期間に選抜固定が可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果に用いられている白色プリマスロック種は劣性白遺伝子を持つ系統で、同じ系統を利用した特産鶏の種鶏場で活用できる。
2. 黒褐色羽装ひなの排除は、ロードアイランドレッド種の集団をeに固定することにより可能と考えられる。
3. 黒色羽装(タイプ1)と黒褐色羽装(タイプ2)の識別が難しく注意を要する(図1)。


[具体的データ]

表1 WPRとRIRの集団に検出されたMC1Rのアミノ酸置換と対立遺伝子頻度
表2 WPRとRIRの交配により得られた雛の羽装色
表3 雛のMC1Rの遺伝子型と観察された羽装色
図1 黒色羽装ひな発生防止試験結果

[その他]
研究課題名:肉用奥美濃古地鶏の高品質化に関する研究
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者: 早川博、小川正幸、大谷健、三輪充(岐阜大)、村山美穂(岐阜大)、加藤未来(岐阜大)、伊藤愼一(岐阜大)
発表論文等:三輪ら(2006)日畜会報77(2):207-214

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