パン粉添加飼料の給与時期が筋肉内脂肪含量の高い豚肉生産に及ぼす影響


[要約]
パン粉添加飼料を体重70kgから90kgまで給与すれば、肥育末期まで給与するより背脂肪の過度な付着を抑制しながら、筋肉内脂肪含量を高められることが推察される。

[キーワード]豚肉質、筋肉内脂肪、パン粉添加飼料

[担当]群馬畜試・中小家畜研究グループ
[代表連絡先]電話:027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  国内の養豚経営において豚肉の高品質化はこれまで以上に重要な課題となっている。近年、赤肉中の脂肪含量が高い豚肉は軟らかく、脂肪由来のこくにより味が良いと言われており、赤肉中の脂肪含量を高める検討が育種的手法及び栄養学的手法によりなされている。
  肥育豚飼料にパン粉を多給することにより筋肉内脂肪含量が増加することは知られているが、発育成績が低下し、厚脂になることが示されている。そこで、発育成績等の低下を抑制しながら筋肉内脂肪含量を増加させるための、パン粉添加飼料の給与時期を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 市販肥育期配合飼料の40%を飼料添加用のパン粉(乾燥品)で代替えした試験用飼料の一般成分は、粗繊維及び粗灰分含量は減少するものの、粗蛋白質、可溶性無窒素物含量が増加しTDNは原物で84%となる(表1)。また、試験用飼料のアミノ酸組成については、パン粉の添加により必須アミノ酸含量は低下し、特にリジンは0.54%と肥育後期の要求量0.56%を下回る。
2. 試験期間中の一日平均増体重は有意差はなかったものの、パン粉添加飼料を肥育試験期間給与した区が平均871gともっとも劣っており、試験期間の前半及び後半のみに給与した順に対照区との間に増体の差は少なくなる(表2)。
3. 枝肉及び肉質は、試験期間全期及び肥育末期の90kgから110kgまでパン粉添加飼料を給与した区は背脂肪が有意に厚くなる。胸最長筋の粗脂肪含量は試験飼料を肥育期間すべてに給与した区は平均4.0%、70kgから90kgまで添加した区が4.2%と有意ではないものの、対照区の3.3%と比較して高い傾向となる。なお、生体重90kgから110kgまで試験飼料を給与した区は筋肉内脂肪含量は対照区と同様である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. パン粉添加飼料の生体重90kgまでの給与で枝肉の厚脂化を抑制し、筋肉内脂肪含量の高い肉が生産されることが示唆されたことから、独自の食肉処理及び販売ルートをもった生産者グループでの技術の活用が望まれる。
2. LD種による試験であるため、品種の違いによる筋肉内脂肪含量の変化に関する検討は未実施である。


[具体的データ]

表1 供試飼料の一般成分−実測値−
表2 試験豚の発育、枝肉形質及び胸最長筋の肉質検査成績

[その他]
研究課題名: 豚の肉質改善に関する研究
−パン添加飼料の給与時期が肥育豚の発育および肉質に及ぼす影響−
予算区分:県単
研究期間:2005年度
研究担当者:湊  和之

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