地域特産鶏(名古屋種)への乾燥酵母細胞壁飼料添加による免疫増強効果


[要約]
名古屋種の鶏に乾燥酵母細胞壁を0.5%の割合で飼料添加(酵母区)すると、飼料要求率では対照区より良い。免疫反応では、抗体産生能で最も高い抗体価は対照区より酵母区は高い傾向が見られ、遅延型過敏反応で酵母区は対照区より有意に腫脹差が大きい。

[キーワード]名古屋種、飼料添加、乾燥酵母細胞壁、抗体産生能、遅延型過敏反応

[担当]愛知農総試・畜産研究部・家きんグループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  農畜産物の「安全・安心」が強く望まれる中、抗菌性物質を添加しない地域特産鶏(名古屋種)の生産技術の確立が養鶏関係者から要請されている。地域特産鶏は平飼いで長期間飼育するため、病原体による生産性阻害要因も生産現場で問題となっている。そこで、抗菌性物質の代わりに乾燥酵母細胞壁を飼料に添加し、発育状況の調査や免疫反応を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 名古屋種30羽(雄)を1群(3反復)として120日齢まで飼育すると、平均体重では酵母区{抗菌性物質無添加飼料1kgに対し乾燥酵母細胞壁(商品名:YCW)を5g添加}は、対照区と同程度であった。飼料要求率では、酵母区と抗菌性物質添加飼料区(抗菌剤区)は同程度であるが、対照区と比べると有意差はみられないが対照区より良い傾向であった(表1)。
2. 3区分(対照区、酵母区及び抗菌剤区)の各雌15羽にヒツジ赤血球(T細胞依存性免疫の指標)及びブルセラ・アボルタス抗原(T細胞非依存性免疫の指標)を4及び5週齢に接種し抗体価の推移を調べると、ヒツジ赤血球抗体価の推移では、酵母区は対照区に比べ抗原接種1週後の抗体のピークは有意差はないが、2倍程高い傾向である(図1)。ブルセラ・アボルタス抗体価の推移では酵母区は対照区に比べ抗原接種1週後の抗体のピークは有意差はないが、高い傾向である(図2)。
3. 3区分の各雄15羽(15週齢)の肉垂にヒトγグロブリンを接種する遅延型過敏反応では、酵母区は対照区に比べ接種24時間後の腫脹差が危険率5%で有意な差がみられる(図3)。
4. 出荷成績や免疫反応から、乾燥酵母細胞壁の添加が効果的である。

[成果の活用面・留意点]
1. 飼料添加をする場合、コスト等の問題で飼料会社との連携が必要であり、多くの生産現場で利用できるように実証試験が必要である。
2. 今後、乾燥酵母細胞壁の生産現場への普及には、病原体に対する効果判定が必要である。


[具体的データ]

表1 出荷成績
図1 ヒツジ赤血球抗体価の推移 図2 ブルセラ・アボルタス抗体価の推移
図3 遅延型過敏反応  

[その他]
研究課題名:免疫増強物質給与による疾病防除技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:伊藤裕和、野田賢治、石井憲一

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