屋上緑化に向けた花マット植物の選定


[要約]
花壇花き苗43品目についてマット化の難易性を判定したところ、36品目でマット化する。マット形成には定植本数よりも品目による影響の方が大きい。

[キーワード]屋上緑化、花、マット植物

[担当]東京農総研・生産技術科・花き研究室
[代表連絡先]電話:042-528-0664
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  都市のヒートアイランド現象の緩和のために屋上緑化の需要は増えつつあるが、景観に配慮した屋上緑化がなされておらず、都市生活者からは観賞性の高い植物種が求められている。そこで、積載荷重の軽減が図られ、季節感にあふれ色彩豊かな花マット植物を選定する。
※)縦25cm×横25cm×高さ4cmのトレイで栽培し根域が連続した基盤で作られた花壇苗

[成果の内容・特徴]
1. 商品性を有するマット植物を選定するため、マット化の可否を判定する基準として、たわみ度(マットの中心線を支点としたわませた時の水平からの下垂長)、硬度指数(株間30ヵ所の土壌硬度計の測定値)、剥離培地率(高さ1mから3回落下させ剥離した培地の総重量に対する割合)を用い、以下のように定めた。すなわち、マット化するものをたわみ度8cm以下とし、そのうちたわみ度が4cm以下で、硬度指数10以上、剥離培地10%以下のものを充分マット化する推奨品目とした(表1)。
2. 供試した43品目のうち、フレンチマリーゴールドやビオラなど36品目でマット化可能である。マット形成には強弱があり、ペチュニアやサルビアなどでは衝撃を加えてもほとんど崩壊することはないが(表1表2)、アリッサム、ストックなどの7品目は、衝撃に弱く、商品性が見込まれない(表1に4品目のみ記載)。このように、マット化には品目による影響が大きい。
3. センニチコウでは定植本数の違いがマット化の強弱に影響を多少与えるが、マット化の可否を変えるほどではない。その他のジニアやキバナコスモス等では、マット形成に及ぼす定植本数の影響はみられない(表3)。
4. マット化し花占有率が高いものとしては、パンジーやペチュニアなどがある。一方、メランポジウムやオシロイバナなどは花占有率が低い(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. この成果は屋上緑化・壁面緑化技術としてだけでなく、イベント等の即席の緑化場面にも応用できる。
2. 作型によってマット形成に違いがでる可能性がある。
3. 花壇を一面覆うような場面や彩りが求められる場面など様々な利用場面に応じ、ここで明らかとなった花占有率や被覆率を活用し花の種類を選定することができる。


[具体的データ]

表1 定植本数9本における品目別マット化の難易性(2005)
表2 花壇花き苗でマット化した植物(2003〜2005)
表3 定植本数とマット化a(2004) 表4 品目別花占有率(2005)

[その他]
研究課題名:都市空間、特に屋上・壁面緑化に向けた軽量・薄層基盤植物の開発
予算区分:国庫(高度化)
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:岡澤立夫、椿眞由己、吉岡孝行、橋本智明、道園美弦(花き研)

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