超微小茎頂分裂組織培養法によるキクウイロイドフリー株作出技術の開発


[要約]
葉原基を含まない茎頂分裂組織をキャベツの根端部へ置床し、培養する超微小茎頂分裂組織培養法により、ウイロイドフリー株が作出できる。作出されたウイロイドフリーの「神馬」は産地で栽培されている株に比べ、草丈が高くなり、切り花重が増加する。

[キーワード]キク、ウイロイド、無病苗、茎頂培養、超微小茎頂分裂組織

[担当]愛知農総試・園芸研究部・花きグループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085(内線541)
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  キクの主産地である愛知県では、キクわい化ウイロイド(CSVd)による被害が大きな問題となっている。しかし、葉原基を含む茎頂分裂組織を用いる通常の茎頂培養ではCSVdのフリー化は困難であった。そこで、葉原基を含まない茎頂分裂組織を用いる新しい培養法を開発し、主要品種「神馬」からCSVdの除去を行い、フリー化の効果を確認する。

[成果の内容・特徴]
1. 葉原基を含まない茎頂分裂組織(直径約0.1mm)を切り取り、5〜10mmに調整したキャベツ根切断面へ置床し、約1か月培養後に生長した植物体を修正MS培地へ移植すると、68.7%の生長点が生存でき、植物体へ生長させることができる(図1表1)。
2. 超微小茎頂分裂組織培養法により、3.1%の株でCSVdをフリー化できる。さらに培養を2回繰り返すことによりフリー化率は16.7%に向上する(表1)。
3. 超微小茎頂分裂組織の培養で得られた「神馬」のCSVdフリー株は、産地で栽培されているCSVdを低濃度で保毒する株に比べ、親株挿し穂生産では採穂数が多く、平均穂重も重くなる(表2)。切り花生産では草丈が高くなり、切り花重も増加する(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 愛知県のキク無病苗供給体制(キク優良種苗供給事業)に本開発技術を組み込み、安定的にウイロイドフリー苗を産地へ供給する。
2. 本成果は全国のキク産地に活用できる。
3. 栄養繁殖性花き類への応用が可能な技術である。


[具体的データ]

図1 超微小茎頂分裂組織培養法
表1 超微小茎頂分裂組織培養法による「ピアト」の生存率とCSVdフリー化率
表2 CSVdフリー株「神馬」の親株挿し穂生産性
表3 CSVdフリー株「神馬」の電照打ち切り時の生育と開花時の切り花品質

[その他]
研究課題名:超微小未分化分裂組織の新規培養法によるキク無病苗生産の体系化
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2005年
研究担当者: 堀田真紀子、長谷川徹、大石一史、加藤俊博、細川宗孝(京都大学)、原  広志(愛知経済連)
発表論文等:堀田ら(2006)関西病虫研報 48:39-40(2006)

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