フェンロー型温室における細霧冷房による温室メロンの品質向上技術


[要約]
夏期にフェンロー型温室において、固定型の細霧冷房装置を使用することで、高温乾燥条件が改善され、温室メロンの草丈や葉の生育が促進される。これにより、ネットの盛りが向上したり、果重が増加したりする効果が得られ、スリークォータ型温室と同等の高品質な温室メロンが生産できる。

[キーワード]温室メロン、フェンロー型温室、細霧冷房装置

[担当]静岡農試・園芸部・メロン超低コストプロジェクト
[代表連絡先]電話:0538-36-1580
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  スリークォータ型温室に比較し、建設費が安く大規模化が可能なフェンロー型温室での高品質な温室メロン生産が現地に普及しつつある。しかし、フェンロー型温室ではスリークォータ型に比べ、温室内が乾燥条件となるため温室メロンの生育や品質が影響を受ける。これらを改善する方策として、フェンロー型温室へ多目的利用細霧システムによる細霧冷房を導入することで、夏期の高品質生産を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 軒高3.5mの高軒高のフェンロー型温室内に固定式の細霧用ノズル(細霧の粒子径約40ミクロン、噴霧量1ノズル約90ml/分)を畝間に高さ2.9mの位置にノズル密度が0.21個/m2となるように設置し、細霧冷房装置(多目的細霧システム利用による自然換気型細霧冷房)を8:30〜16:30の噴霧時間帯に温室内が30℃以上になった条件下で、噴霧30秒、噴霧間隔4分30秒で稼動させれば、葉面が軽く濡れてすぐ乾く状態に噴霧することができる。なお、曇雨天時には、効果が期待できないため、温室内が30℃以上の晴天条件下で噴霧するのが良い。
2. 夏期高温期の晴天状況下において細霧冷房装置を利用することにより、フェンロー型温室で細霧冷房を使用しない場合と比較すると10分ごとの平均温度で最大2.5℃前後、高温抑制でき、相対湿度は80%程度に保つことができる(図1)。
3. 8月から9月の高温条件下では、細霧冷房装置を利用することにより、草丈や葉の生育が促進される(データ略)。とくに、上位葉で葉面積が大きくなり、株全体の乾物重も大きくなることにより生育は旺盛となる(図2)。さらに、収穫後に、茎からの出液量を調査した結果、細霧冷房装置を利用した場合は出液量が多く、根の活力が高い(図3)。
4. 細霧冷房装置の利用により、温室メロンの生育が旺盛となることで、果重が増加せずにネットの盛りの向上が見られる場合と、果重が増加してネットの盛りが変化しない場合があり、いずれにしても収益性の向上が図られる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験は346m2のフェンロー型温室を3区画(1区115m2)に分割し実施した結果である。
2. 噴霧間隔を短くすると常に植物体が濡れた状態となるため生育上好ましくない。細霧冷房装置の効果を高めるには、十分な換気量を確保し、温室条件(規模)にあった適切な噴霧時間や間隔を確認し、噴霧過剰による高湿度や作物の濡れに注意する。
3. スリークォータ型温室では、日中の温室内の湿度がフェンロー型温室よりも10〜15%程度高めであり、作物上の空間が狭く葉の濡れが少ない噴霧は困難である。


[具体的データ]

図1 フェンロー型温室における細霧冷房使用による気温及び湿度の日変化の例(2002/7/28 晴)
図2 細霧冷房の使用が温室メロンの葉面積・葉身乾物重に及ぼす影響(2004) 図3 細霧冷房の使用が温室メロンの茎からの出液量に及ぼす影響(2004)
表1 フェンロー型温室における細霧冷房の利用が温室メロンの果実品質へ及ぼす影響(夏作)

[その他]
研究課題名:異常気象下での温室メロン高品質安定生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:大須賀隆司、忠内雄次、堀内正美

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