イチゴの受精胚および胚珠の発育過程


[要約]
イチゴの受精胚および胚珠の形態変化は、痩果の外観からは予測できないが、胚や胚珠の発育は果実の成熟と連動しており、果実成熟必要日数に対する受精胚が最大となる日数および不受精胚珠が退化する日数の比率は一定である。

[キーワード]イチゴ、受精胚、胚珠、発育、果実成熟日数

[担当]静岡農試・生物工学部・品種開発
[代表連絡先]電話:0538-36-1558
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  イチゴ育種において、倍数性や種が異なる交雑育種では不稔等の問題が多く、胚培養あるいは胚珠培養時における胚や胚珠の摘出時期等の確立が望まれる。そこで、受精胚および胚珠の発育過程を5月と12月に観察調査し、胚や胚珠の摘出・培養時期を決定するための基礎資料を得る。

[成果の内容・特徴]
1. 受精胚は、球状から上部に凸部(後の幼根)を生じ、その後急速に肥大は進み、5月では14日(データ略)、12月では26日で最大となる(図1上段)。稔実痩果は、交配当日から受精胚が観察され始めた日にかけて急速に肥大するが、その後の大きさは変化しない(図1下段)。
2. 不受精胚珠は、5月では交配後4日(データ略)、12月では交配後12日頃より退化しはじめ、胚珠全体が退化する(図2上段)。不受精痩果の形態は、交配当日から観察終了日まで変化しない(図2下段)。
3. 5月と12月において、果実の成熟日数を100とした場合、不受精胚珠が退化するまでの日数比率は45%で、受精胚が最大になるまでの日数比率は64%(5月)と65%(12月)となり両期でほぼ同一で一定である(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本データは「紅ほっぺ」についてであり、1回の観察につき2〜3果実から10〜20個の稔実痩果および不稔実痩果を供試した。「けいきわせ」についても同様の傾向を確認している。


[具体的データ]

図1 イチゴの受精胚と稔実痩果の発育過程(12月)
図2 イチゴの不受精胚珠および受精胚珠の形態的変化(12月)
図3 受精胚および不受精胚珠の形態的変化を示す模式図

[その他]
研究課題名:放射線を利用した本県特産野菜の優良品種・母体の育成と育種技術の改良
予算区分:国交(放射線)
研究期間:2005〜2006年度
研究担当者:佐々木麻衣、竹内  隆

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