新芽生育期におけるアゾキシストロビン水和剤によるチャ輪斑病の防除


[要約]
摘採後に発生する輪斑病の葉枯れ症状と枝枯れ症状(新梢枯死症)に対し、アゾキシストロビン水和剤2000倍(使用基準:摘採14日前まで)の新芽1.5葉期頃の散布は有効である。

[キーワード]チャ、輪斑病、新梢枯死症、薬剤防除、アゾキシストロビン

[担当]静岡茶試・病害虫研究
[代表連絡先]電話:0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  Pestalotiopsis longisetaによる摘採後の輪斑病の防除適期は摘採直後であるが、周囲の未摘採園へのドリフトの問題からほとんど不可能な状況にある。また、最近、静岡県では摘採後に輪斑病の葉枯れ症状と茎枯れ症状の他に、新梢枯死症と考えられる枝枯れ症状の発生が増加傾向にあり問題となっている。そこで、摘採前の新芽に付着する病原菌を死滅あるいは活動を阻害することを目的に、ストロビルリン系のアゾキシストロビン水和剤の新芽生育期散布により、摘採後に発生する輪斑病の葉枯れ症状と枝枯れ症状(新梢枯死症)の同時防除の可能性を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. アゾキシストロビン水和剤2000倍(使用基準:摘採14日前まで)は、摘採14〜16日前の二番茶芽1.5葉期前後の散布により、葉枯れ症状に対し68〜96%の防除率、枝枯れ症状(新梢枯死症)に対し72〜88%の防除率を示し、両症状に対する防除効果は他剤に比べ高く、実用的な防除効果が認められる(表1)。
2. 葉枯れ症状に対する効果は、散布時期が1葉期に満たない時期では低いが、新芽の生育に伴い高くなり、1.5葉期頃から実用的な防除効果示す。同時時期の枝枯れ症状(新梢枯死症)に対する効果は摘採直後散布よりも高い(表2)。
3. 現地試験においても二番茶摘採16日前の1.5〜2.0葉期の散布は、炭疽病防除を主眼としたテブコナゾール水和剤の散布に比べ、輪斑病の葉枯れ症状と枝枯れ症状(新梢枯死症)の発生を強く抑制する(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 葉枯れ症状に対する新芽生育期防除の効果は、摘採直後防除に比べ劣る。
2. アゾキシストロビン水和剤の葉枯れ症状に対する新芽生育期防除の効果は、新芽の生育が進むに従い高くなるが、本剤の使用基準は摘採14日前までなので、不正使用にならないよう十分注意する。
3. 新芽生育期防除は摘採後に残った茎葉での発生抑制を目的としているので、発生部位を除去するような整せん枝を実施する茶園では防除の必要がない。


[具体的データ]

表1 アゾキシストロビン水和剤のチャ輪斑病に対する新芽生育期散布の効果
表2 アゾキシストロビン水和剤の新芽生育期の散布時期がチャ輪斑病の防除効果に及ぼす影響
表3 現地茶園におけるアゾキシストロビン水和剤のチャ輪斑病に対する二番茶生育期散布の効果(2005年)

[その他]
研究課題名:新農薬及び新肥料の効果確認及び使用法の解明
予算区分:県単
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:西島卓也

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