バンカー植物で増えたケナガカブリダニがカンザワハダニの密度を抑制する


[要約]
キク科のチトニアをバンカー植物に利用することで、チトニアで増殖したケナガカブリダニが茶園へ移動し、チトニアから8.5m離れた5畝目までチャのカンザワハダニの密度を抑制する。

[キーワード]チャ、カンザワハダニ、土着天敵、ケナガカブリダニ、バンカー植物、チトニア、生物的防除

[担当]三重科技セ・農業研究部・茶業研究室
[代表連絡先]電話:0595-82-3125
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  土着天敵の保護利用技術に、天敵を増殖・温存できるバンカー植物の利用がある。茶栽培においては、キク科のチトニア(Tithonia rotundifolia)にナミハダニを放飼することで、カンザワハダニの土着天敵であるケナガカブリダニを効率的に増殖できることが分かっている(平成17年度成果情報)。そこで、バンカー植物によるカンザワハダニの生物的防除技術を確立するために、チトニアで増殖したケナガカブリダニの茶園への移動状況、さらに、移動したケナガカブリダニによるカンザワハダニの密度抑制効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. チトニアは3月上旬から下旬にかけて播種し、4月中旬から5月中旬にかけて、茶株雨落ち部から50cm離し、茶畝と平行に7列を株間20cmで定植する(図1)。
2. 定植1〜2ヶ月後、チトニアが十分繁茂し地表面を覆う程度まで生育した時に、ナミハダニ幼成虫を植裁面積1m2当たりに10,000〜20,000頭放飼する(図1)。放飼後15〜40日程度でケナガカブリダニの密度は最も高くなり、この時のチトニア1葉当たりのケナガカブリダニは1.5〜2.0頭程度である(表1)。
3. チトニアにおけるケナガカブリダニの密度が最も高くなった後、ケナガカブリダニの発生ピークは、5〜10日間隔で隣接する1畝目から、3畝目、5畝目にかけて移動する(図2)。チトニアを植えていないと、ケナガカブリダニの発生ピークの経時的移動は確認できないことから、チトニアで増殖したケナガカブリダニが茶園へ移動したことは明らかである。
4. チトニアをバンカー植物に利用することで、茶園のケナガカブリダニが早い時期から増加し、チトニアから8.5m離れた5畝目までカンザワハダニの密度を抑制する(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. チトニアにケナガカブリダニが定着している場合があり、ナミハダニ放飼量が少ないとケナガカブリダニの増殖程度が低い恐れがあるので、ナミハダニ放飼前にケナガカブリダニの密度を調査する必要がある。


[具体的データ]

図1 チトニアの導入方法例 表1 チトニアおけるケナガカブリダニの増殖程度
図2 ケナガカブリダニの密度推移
図3 バンカー植物によるカンザワハダニ密度抑制効

[その他]
研究課題名:土着天敵によるカンザワハダニ制御技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2005〜2006年度
研究担当者:富所康広、磯部宏治

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