中生、良食味の低グルテリン米新品種「ゆめかなえ」


[要約]
低グルテリン米の新品種「ゆめかなえ」は、成熟期が「コシヒカリ」と比べて9日早い中生の粳品種で、食味は「コシヒカリ」に劣るが、既存の低グルテリン米品種「エルジーシー1」には優る。耐倒伏性は「やや強」、耐冷性は「やや弱」、穂いもち抵抗性は「弱」。

[キーワード]水稲、低グルテリン米

[担当]千葉農総研・育種研究所・水稲育種研究室
[代表連絡先]電話:0478-56-0002
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  独立行政法人で開発された水稲品種「エルジーシー1」等の低グルテリン米品種は、玄米中の易消化性タンパク質「グルテリン」が通常の品種より少ないため、特殊用途で新規の需要が見込め、注目を集めている。しかし、既存の低グルテリン米品種には、熟期が遅いため本県での栽培に適さない、玄米外観品質が不良である、食味が最近の良食味品種と比べて劣る、といった普及上の問題点があった。そこで、「エルジーシー1」等の低グルテリン米品種を母本として、千葉県の水利慣行に適した栽培特性に優れる良質・良食味品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
  既存の低グルテリン米品種「エルジーシー1」に良食味の「ひとめぼれ」を交配して「ゆめかなえ」を育成した。
  「ゆめかなえ」には以下の特徴がある(表1)。
1. 成熟期が「コシヒカリ」と比べて9日早い中生の粳品種である。
2. 食味は、「コシヒカリ」と比べて劣るが、「エルジーシー1」には優る。
3. 稈長が短く、耐倒伏性は「やや強」である。耐冷性は「やや弱」、穂いもち抵抗性は「弱」である。
4. 収量は、「コシヒカリ」と比べてやや少ない。
5. 玄米外観品質は良好で、「コシヒカリ」や「エルジーシー1」と比べて優る。
6. 「エルジーシー1」と同様に、易消化性タンパク質のグルテリンが通常品種の半分程度の低グルテリン米である。

[成果の活用面・留意点]
1. 耐冷性が「やや弱」、穂いもち抵抗性が「弱」なので、無理な早植えをせず、いもち病常発地での作付けは避ける。
2. 低グルテリン米という品種の特性を活かすため、玄米のタンパク質含有率を高める多肥栽培を避ける。
3. 実需者が限られることから、販売先の開拓が必要である。
4. 効能等の表示が法律で規制されているので、米販売時の表示は適正に行う。


[具体的データ]

表1 「ゆめかなえ」の特性
表2 玄米に含まれるタンパク質の組成

[その他]
研究課題名:水稲の新品種育成
予算区分:県単
研究期間:1996〜2005年度
研究担当者: 林玲子、西川康之、和田潔志、長島正、齋藤幸一、小山豊、渡部富男、渡辺智子(千葉県立衛生短期大学)、土橋昇(千葉県立衛生短期大学)
発表論文等:平成17年4月品種登録出願 稲「ゆめかなえ」

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