紙ポットと拮抗微生物を用いたベニバナインゲンの2種土壌病害に対する生物防除


[要約]
トリコデルマ菌の拮抗性菌株の胞子資材を市販園芸培土に混和して紙ポットに詰め、ベニバナインゲンを播種・育苗して移植するとT-29菌株は白絹病に、T03890菌株はリゾクトニア根腐病に対して防除効果を示す。

[キーワード]ベニバナインゲン、白絹病、リゾクトニア根腐病、土壌病害、生物防除

[担当]茨城農総セ農研・病虫研究室
[代表連絡先]電話:029-239-7213
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  ベニバナインゲンは換金性の高い地域特産マメ類として茨城県北部の地域振興に重要な作目となっているが、現地で発生している各種土壌病害に対する有効な防除法はない。そこで、白絹病、リゾクトニア根腐病を対象に拮抗微生物を用いた環境保全型防除技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. トリコデルマ菌の選抜菌株、Trichoderma harzianum T-29菌株およびT. sp.T03890菌株の分生子を草炭(ピート)に吸着させた資材(出光興産試作)を用いて、菌密度が1×105CFU/g土壌になるように市販の園芸培土に混和する。それを5.5cm角の紙ポット(安藤パラケミー製)に詰め、種子を1粒ずつ播種して10日間育苗して移植する。この菌密度においては発芽不良等の障害は全く認められない。
2. T-29菌株は白絹病に対するポット試験の結果、菌密度104 CFU/g土壌より105 CFU/g土壌の方が安定した高い防除効果を示す(表1)。
3. 白絹病に対する圃場試験では、定植107日後における無処理区の発病度が43.4であるのに対し、T-29菌株処理区の発病度は4.1(防除価90.3)と低く、極めて高い防除効果を示す。しかし、T03890菌株処理区の発病度は21.6(防除価49.1)となり、防除効果はやや劣る(表2)。
4. リゾクトニア根腐病に対する圃場試験では、定植107日後における無処理区の発病度が17.5であるのに対し、T03890菌株処理区の発病度は4.6(防除価63.2)と低く、高い防除効果を示す。しかし、T-29菌株処理区の発病度は9.1(防除価27.2)と防除効果は低い(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. トリコデルマ菌株は病害により防除効果が異なるため、対象とする病害を診断した上で、その病害に効果を示すトリコデルマ菌株を使用する。/TD>
2. 定植にあたっては、紙ポット内土壌の表面が圃場の土壌表面よりやや高くなるよう苗を設置し、ポット内に汚染土壌が入らないようにする。
3. T-29、T03890のトリコデルマ菌株は生物農薬無登録である。


[具体的データ]

表1 Trichoderma harzianum T-29菌株の紙ポット内菌密度がベニバナインゲン白絹病の防除効果に及ぼす影響(2004年)
表2 拮抗微生物を用いたベニバナインゲン白絹病防除効果(2005年)
表3 拮抗微生物を用いたベニバナインゲンリゾクトニア根腐病防除効果(2005年)

[その他]
研究課題名:拮抗微生物を核とした特産マメ類立枯性病害防除システムの開発
予算区分:高度化事業
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者: 渡邊  健、仲川晃生(中央農研)、近藤彰宏(出光興産)、伊豆  進(出光興産)、本橋みゆき、柴田夏実、青木一美

目次へ戻る