認定農業者や集落営農も利用できる農業経営意思決定支援システム


[要約]
法人経営の経営者、認定農業者、集落営農組織の代表者を主たるユーザとしたシステムであり、決算書等のデータを入力することで、経営計画のシナリオに対応した収支や財務指標値が推計・グラフ表示され、改善計画案の収益性や安全性が簡易に分析できる。

[キーワード]意思決定支援、財務分析、財務指標、法人経営、認定農業者、集落営農

[担当]中央農研・農業経営研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8875
[区分]共通基盤・経営、関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  農業の担い手確保対策として、認定農業者や、協業化して組織体としての発展を目指す集落営農の育成を図るとともに、それら経営・組織の体質強化に向けた農業経営者や組織代表者の経営管理能力の向上が重要な課題となっている。
  そのため、経営計画と財務分析を連動させることで、計画シナリオに沿った経営改善計画案に対する収益性や財務安全性等を分析し、その妥当性の評価に活用することを目的に、簡易に、短時間で操作でき、法人化していない認定農業者や集落営農組織のリーダーにも利用可能な農業経営意思決定支援システムを開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 本システムは、マイクロソフトエクセルのマクロ機能を用いて作成されており、実績の入力と計画の入力ボタンから必要事項を入力すると、試算結果が表示される(図1)。
2. 経営収支及び財務指標の推計においては、損益計算書が仮に2部門に分けて整理されていた場合、実績(貸借対照表及び損益計算書53項目)、計画(計画期間5年間の作物別面積・単収・単価、規模拡大する農地の種類、投資内容など42項目)を入力することで、計画期間の損益や財務指標(26指標)の推計値が計算・表示される。
3. 基本的な財務指標である収益性(総資本経常利益率)、財務安全性(流動比率、固定長期適合率、自己資本比率)、生産性(労働分配率)については、各数値を農林漁業金融公庫の融資先データの平均値及び標準偏差をもとに5段階に区分し、レーダーチャートとしてそのランクの変化が図示される(図2)。
4. 個人の農業者は、青色申告決算書のデータに経営者報酬等を追加することで(図3)、法人経営と同様の収支予測や財務分析が実施できる。
5. 集落営農組織を対象とした分析では、組織化の効果や、収益配分のシナリオに沿った農地保有農家、オペレーター層、組織内蓄積向けの配分額が表示される。
6. キャシュフロー計算書が自動的に作成されることから、資金繰りに関心を持つ法人経営者はキャッシュフローの源泉がどこにあるかが把握できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 本システムは、耕種部門を基幹とする法人経営、青色申告決算書を作成している農業者、協業化している集落営農組織において利用できる。
2. 本システムは、法人経営向けに作成した「品目横断的経営安定対策に対応した経営意思決定支援システム」(平成18年度研究成果情報)に、①認定農業者や集落営農組織等への利用拡大、②入力の簡便化とデータ管理の容易化、③試算結果のグラフ表示、④財務指標値のランク付け、⑤キャッシュフロー計算書の作成などの機能を追加したものであり、システム及びその利用マニュアルは、中央農業総合研究センターのウェブサイト(http://narc.naro.affrc.go.jp/team/fmrt/index.htm)からダウンロードできる。


[具体的データ]

図1 システムのメニュー画面

図2 グラフ表示例(主要財務指標のレーダーチャート) 図3 認定農業者版の損益計算書入力シート(一部のみ表示)

[その他]
研究課題名:関東・東海・北陸地域における個別経営体の総合的経営管理手法及び多様な主体間連携による地域活性化手法の開発
課題ID:211-a
予算区分:重点強化費
研究期間:2007年度
研究担当者:松本浩一、大室健治、梅本雅、大石亘、高橋明広、山本淳子

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