農業用の水路維持管理のための生物保全・再生及び住民参加活用マニュアル


[要約]
農業用水路内の生物を保全再生する活動を通じ、農業関係者と地域住民等が協働して水路の継続的な維持管理を行う方法について、農業農村整備事業の進め方と住民の認知を基準に体系的に整理し、工学・生物学・社会科学の面から記述した総合マニュアルである。

[キーワード]生物保全・再生、農業用水路、住民参加、維持管理、マニュアル

[担当]埼玉農総研・水田農研・生産環境担当
[代表連絡先]電話:048-521-5041
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]行政・普及

[背景・ねらい]
  農業農村整備事業では、環境との調和への配慮と住民参加の基本原則に則り、事業展開がなされている。このため、農村工学や生物学の視点からとりまとめた技術マニュアルや、住民参加に向けた各種ワークショップマニュアルが作成されている。しかし、実践的かつ継続的な維持管理のためには、これらマニュアルの統合、体系化が必要である。
  そこで、農家や住民に向けた農業用水路での生物保全に関する啓発活動から継続的維持管理に至るまでに必要な作業を、体系的に整理する。そして、専門家でない農家や住民が事業の主旨を理解し実践できるように、農業農村工学、生物・生態学、社会科学の視点から総合的かつ平易なマニュアルを作成する。

[成果の内容・特徴]
1. 住民参加の段階(基本シナリオ)に沿ってストーリー(その時々に行う作業の目的や理由)と、ツール(その詳細な研究開発技術と実施方法、計102本)で構成され(図1)、場所設定、必要人数、所要時間、必要な用具、具体的な方法などが一目で分かるように収められてる。
2. 基本シナリオは、農家や地域住民等が、水路やその周囲で生き物の存在を感じ、どのような生き物がいるかを知り、生き物と水路の関係を考え、他人の意見を理解し、どのような行動を選択するかという住民認知の流れと、農業農村整備事業等の進め方が適合するように記載している(表1)。
3. 住民参加に関しては、啓発や合意形成に向けたワークショップの意義や実施方法、農業体験や生物とのふれあい体験等を活用した手法、計画案作成の手順、GISを活用した情報提供手法、生物ブランド米を活用した都市と農村の交流手法等を記載している。
4. 本マニュアルはDVDに記録されており、利用は簡単かつ迅速に行える。また、知りたい事柄は索引から速やかに検索することができる(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 地方自治体や土地改良区等の職員向けに作成されている。また、農地・水・環境保全向上対策を実施しようとする団体等で活用できる。
2. 調査は、東北の平坦農村地域、関東・東海の都市近郊地域、北陸の中山間地域において実施された。このため、自然条件、社会条件が異なる地域では、手順・手法を適宜変更することが望まれる。
3. 本マニュアルに従えば、必ず住民参加と生物保全、水路の継続的な維持管理が確立できるとは限らない。その場合は、他手法を取り入れる必要がある。
4. 入手希望者は、埼玉県農林総合研究センター水田農業研究所(電話:048-521-9461、e-mail:k215041@pref.saitama.lg.jp)へ連絡してください。


[具体的データ]


表1.生物保全に向けた住民へのアプローチ方法と住民認知
図1 マニュアルの基本シナリオとストーリー画面(ストーリー「住民参加を活用しよう」を開いたところ)

[その他]
研究課題名:自然再生のための住民参加型生物保全水利施設管理システムの開発
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:渡辺俊朗(埼玉農総研)、長田茂、(宮城農園研)、安達直人(石川農総研)、宮本晃(愛知農総試)、鎌田直人(東大)、後藤真太郎(立正大)、安中誠司(農工研)
発表論文等:1)渡辺俊朗(2008)農業および園芸83(1):211-220
                  2)合崎英男ら(2007)農業農村工学会論文集252:103-110

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