農業における合同会社(LLC)の類型と設立に当たっての特徴


[要約]
農業分野においては、設立手続きや機関設計の簡便性、運営の柔軟性など制度上の特徴を生かして、円滑な事業継承や事業拡大、新事業の創設などめざした多様な類型の合同会社が設立されている。

[キーワード]合同会社(LLC)、法人化、事業継承、共同事業

[担当]中央農研・農業経営研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8420
[区分]共通基盤・経営、関東東海北陸農業・経営
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
  農業経営の法人化は経営管理や対外的な信用力の向上、農業経営の確立や後継者確保に有効な手段といわれている。2006年会社法の施行により会社法人は株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4つとなった。合同会社は人的結合を生かして創業の活発化や産学連携の促進等を目的に新設された会社形態で、株式会社と比べ設立の簡便性や柔軟な運営ができるなどの特徴を持ち(表1)農業での適応が期待される。そこで9件の設立が見られる福井県の事例をもとに、農業分野における合同会社設立の実態と特徴を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 福井県の事例では、いずれも土地利用型経営が合同会社を設立しているが、多くが以前から法人化を計画しており、世代交代や事業継承、新事業導入などを契機に法人化を行っている(表2)。
2. 設立された合同会社は、家族経営協定の内容を定款に生かした家族経営協定型の合同会社(A農園)、新規参入者への事業継承を予定した事業継承型の合同会社(Bファーム)、複数の経営からなる共同経営型の合同会社(Cファーム、D農産)、構成員の経営発展を目的に一部分のみを事業化した共同事業型(Eファーマーズ)の合同会社など多様なタイプに区分できる。
3. 合同会社選択の理由として、設立手続きの容易さや定款認証が不要といった経費負担が少ないこと、取締役会の設置が不要など機関設計の簡便性などが各類型とも共通に見られる。これに加えて、家族経営協定型や事業継承型では制度の特徴でもある出資比率と関係なく話し合いなどによる柔軟な組織運営が可能であること、共同経営型や共同事業型では事業展開に必要な農地集積のために地域農民が株式会社に対して持つ営利追求というイメージを緩和させることが選択理由となっている。
4. 生産物の共同販売、資材の共同購入などの取り組みは有限責任事業組合(LLP)でも可能である(表2備考欄)。しかし、有限責任事業組合(LLP)に求められる組織の意思決定に全員一致の議決を合同会社は必要としないため、事業展開のための迅速な意思決定が容易であり、また、法人格を持つことで農地貸借や所有が可能となるため地域での農地集積の交渉力の強化も期待できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 家族経営協定や事業継承、共同事業を想定した法人化を検討する際の参考となる。
2. 合同会社は定款の内容によって会社の独自性が出るので、目的にあった定款を作成するなどの工夫をするとともに、設立の実務に対しては専門家の助言を求めることも必要である。
3. ここで取り上げた事例は土地利用型経営であることに留意する必要がある。


[具体的データ]

表1 合同会社、株式会社、有限責任事業組合の特徴
表2 合同会社の概要

[その他]
研究課題名:関東・東海・北陸地域における個別経営体の総合的経営管理手法及び多様な主体間連携による地域活性化手法の開発
課題ID:211-a
予算区分:基盤費
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:関野幸二

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