米ぬか給与による牛蓄積脂肪の脂肪酸組成変化


[要約]
黒毛和種去勢牛に米ぬかを濃厚飼料中8%添加した飼料を給与すると、飼料摂取量、日増体量および格付成績に差はないが、筋肉内脂肪のオレイン酸割合は高まり、脂肪酸組成の制御に有効である。

[キーワード]米ぬか、蓄積脂肪、脂肪酸組成、オレイン酸、黒毛和種去勢牛

[担当]群馬畜試・大家畜研究グループ、茨城畜セ肉研・飼養技術研究室、栃木畜試・肉牛研究室、千葉畜総研・乳牛肉牛研究室
[代表連絡先]電話:027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  牛肉ではオレイン酸等のモノ不飽和脂肪酸割合が高く、飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸割合が低いほど風味がよいという報告がある。従来から枝肉脂肪の脂肪酸組成の改善を目的として肥育後期に米ぬかを給与している農家が見受けられる。しかし、米ぬか給与が脂肪酸組成に及ぼす影響を明確にした報告は少ない。そこで、オレイン酸を多く含む米ぬか給与が黒毛和種去勢牛の産肉性および枝肉脂肪の脂肪酸組成に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 黒毛和種去勢牛26頭を供試し、濃厚飼料中に米ぬかを8%添加する区と、米ぬかの替わりに同量の脱脂米ぬかを添加する区を設定し、前期36週、後期38週の肥育試験を行う(表1)。
2. 米ぬかと脱脂米ぬか給与の違いによる飼料摂取量、日増体量および格付成績に差はない(表2)。
3. 米ぬかを肥育全期間給与することにより、第6〜7胸椎間の胸最長筋肉内脂肪ではオレイン酸割合が高まる(P<0.05)。また、不飽和脂肪酸およびモノ不飽和脂肪酸割合も高まる傾向(P=0.08)が認められる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 米ぬかは美味しい牛肉生産の飼料として、さらに、トウモロコシや大麦と比べて安価であることから低コスト牛肉生産にも活用できる。
2. 米ぬかはリンが多く含まれ、カルシウムが少ないため、飼料中のカルシウムとリンの比率に注意する。
3. 米ぬかは粗脂肪含量が高いため、温度の高い季節には脂肪の劣化に注意する。
4. 脂肪含量が高すぎると下痢を発症すことがあるため、飼料乾物中の脂肪含量が6%を超えないように飼料設計する。


[具体的データ]

表1 飼料混合割合(%) 表3 筋肉内脂肪の脂肪酸組成(%)
表2 原物飼料摂取量および発育(kg/日・頭)

[その他]
研究課題名:飼料構成の違いが黒毛和種去勢牛の脂肪質・食味性に及ぼす影響
予算区分:県単
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:浅田勉、黒沢功(群馬畜試)、岩間永子、高橋覚志(茨城畜セ肉研)、
                  堀井美那、蓼沼亜矢子(栃木畜試)、有路優子、石崎重信(千葉畜総研)

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