稲発酵粗飼料は交雑種去勢牛肥育の粗飼料として有効


[要約]
交雑種去勢牛に稲わらの代わりに稲発酵粗飼料を給与すると、牛の嗜好性が良く、肉質も良好で、肉色・脂肪色に影響しない。また、牛肉中のビタミンE含量が増加して肉保存中の肉色変化や酸化を抑制する効果がみられる。

[キーワード]稲発酵粗飼料、肥育、交雑種去勢牛、ビタミンE、β-カロテン、酸化防止

[担当]千葉畜総研・畜産草地研
[代表連絡先]電話:043-445-4511
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  稲発酵粗飼料(稲WCS)は、水田の有効活用と粗飼料自給の観点から生産・利用の拡大が期待されている。稲WCSは嗜好性が高い粗飼料であるが、稲わらに比べてβ-カロテン含量が高いため、高い脂肪交雑を狙う「ビタミンA制御型」の黒毛和種や交雑種肥育農家では、肥育中期以降の給与が敬遠されている。しかし、肥育後期にβ-カロテンを給与しても「脂肪交雑」への影響が小さいとされている。また、稲WCSに豊富に含まれるビタミンEによる酸化防止や肉色保持効果が期待される。そこで、交雑種去勢牛12頭を供試して、「稲発酵粗飼料生産・給与技術マニュアル」に示された交雑種去勢牛への給与メニューを検証するため肥育試験を実施する。

[成果の内容・特徴]
1. 表1の給与メニューに従って、稲WCSを給与しない「対照区」、稲WCSを前期と後期に給与する「前後区」、全期間給与する「全期区」を比較したところ、稲WCSは肥育牛の粗飼料として嗜好性が良く、肥育全期間給与することで発育が優れ肉質も良好である。肥育中期に給与を止めて稲わらを給与することで血液中のビタミンA濃度が速やかに低下(20IU/dl程度)(図1)するため、摂取量・増体がやや低くなるが、「ビタミンA制御」が可能であり高い肉質を達成することができる(表2表3)。稲WCSの給与は肉色、脂肪色には影響しない。
2. 稲WCSは稲わらに比べてβ-カロテン含量が高いため全期間給与では下痢や飼料摂取量の低下などの問題を未然に防ぐことができる。また、後期に給与することで牛肉中のビタミンE濃度が上昇し、ミオグロビンのメト化で示される肉の褐色化や肉の酸化の指標であるTBARS値の上昇を抑制する効果が期待できる(表4)。
3. 肥育牛一頭当りの飼料費(千円)は対照区:291、前後区:246、全期区:247、枝肉販売金額(千円)は対照区:653、前後区:738、全期区:692、差額(千円)は対照区:362、前後区:492、全期区:445と、前後区、次いで全期区が対照区に比べて収益性が高くなる。

[成果の活用面・留意点]
1. β-カロテン含量は、品種・熟期・調製法等によって大きく変わるため、給与する稲WCSと配合飼料中のβ-カロテン含量を把握し、血液中のビタミンAをモニターする必要がある。
2. 稲WCS乾物中のNDF含量は稲わらの70%、乾物1kg採食当りの咀嚼時間(=採食時間+反すう時間;RVI)は56〜90分と稲わらの概ね70%であると報告されている。稲WCSを稲わらに代えて粗飼料として給与するときに稲わらと同程度の咀嚼時間を確保するためには、乾物量として稲わら給与量の1.4倍程度が必要である。


[具体的データ]

表1 試験区分と給与飼料(各区4頭) 図1  血漿中ビタミンAの推移
表2 飼料乾物摂取量・体重・日増体量
表3 枝肉成績の平均値 表4 ロースの肉質分析結果

[その他]
研究課題名:交雑種去勢牛の稲発酵粗飼料利用による効果的な肥育技術の確立
予算区分:地域農業総合確立事業
研究期間:2004〜2007年度
研究担当者:石崎重信、山田真希夫

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