黒毛和種繁殖雌牛における稲発酵粗飼料の通年給与技術


[要約]
稲発酵粗飼料を黒毛和種繁殖雌牛の基本飼料として10kg通年給与し、3年間長期飼養した結果、各繁殖ステージにおける健康状態、繁殖性および子牛の発育に問題はなく、1年1産が達成される。

[キーワード]稲発酵粗飼料、黒毛和種、繁殖、肉用牛、飼料利用、通年給与

[担当]長野畜試・肉用牛部
[代表連絡先]電話:0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  食料自給率の向上と飼料価格高騰に対応するためには、これまで以上に自給飼料の利用を推進することが重要な課題となっている。このような中、飼料イネの栽培は水田のもつ自然環境保全機能を維持しながら、これまでの稲作技術をそのまま利用できるため、水田基盤の維持と自給飼料生産の拡大に有効な飼料作物として位置付けられている。
  本情報は、稲発酵粗飼料の生産・利用の大幅な拡大を目指したもので、稲発酵粗飼料を黒毛和種繁殖雌牛へ通年給与し、長期飼養による連産性を検討するとともに、維持期・妊娠末期・授乳期における給与の体系化を図り、稲発酵粗飼料主体の飼養技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 基本飼料として試験区では稲発酵粗飼料(乾物率34%)を原物10kg、対照区ではチモシー乾草を給与し、体重別に日本飼養標準・肉用牛のTDN充足率が100%となるように飼料給与量を設定する(表1)。また、繁殖ステージは維持期(妊娠末期および授乳期以外の期間)、妊娠末期(分娩予定2ヵ月前)および授乳期(分娩後90日)の3ステージとし、黒毛和種繁殖雌牛8頭(各区4頭)を用いた3年間の飼養試験による。
2. 分娩直後の体重の減少は、試験区と対照区でほとんど差はなく、両区とも分娩直後のレベルを維持し、分娩後5ヵ月から増加に転じる。また、9ヵ月後には分娩前の体重まで回復するので、飼料給与は適正であると考えられる(図1)。
3. 繁殖成績については両区にほとんど差はなく、分娩間隔は試験区351日、対照区358日で1年1産が達成できる(表2)。
4. 供試牛全頭が事故無く分娩し、妊娠期間は試験区が293日で対照区に比べ2日程長くなるが、産子の生時体重は試験区が36.0kg、対照区が35.3kgで両区に差はない。また、3ヵ月後の離乳時体重も両区にほとんど差はなく約123kgで、1日増体重0.97kg/日程度で両区にほとんど差はなく発育は良好であるが、個体差は大きい(表2)。
5. 稲発酵粗飼料を給与した試験区は、血漿中のα-トコフェロールが対照区に比べ3〜4倍の値となり、β-カロテン、総コレステロール(T-cho)も対照区に比べ高く推移するが、ビタミンA、GOTには両区に大きな差はない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 稲発酵粗飼料は黒毛和種繁殖雌牛の主たる粗飼料として利用できる。
2. 稲発酵粗飼料は飼料成分分析を実施したうえで利用し、発酵品質にも十分注意する。


[具体的データ]

表1 稲発酵粗飼料給与試験飼料給与メニュー
図1 分娩前後の体重の推移
表2 繁殖成績と子牛の発育
表3 繁殖雌牛の血漿成分値の推移

[その他]
研究課題名:稲発酵粗飼料を用いた肉用繁殖雌牛・肥育牛の飼料給与技術の確立
予算区分:交付金プロ(関東飼料イネ)
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:井出忠彦

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