グリセリンとバイパスアミノ酸の併用投与による乳牛のケトーシス予防


[要約]
移行期の乳牛に、25%グリセリンペレット製剤とルーメンバイパスアミノ酸を併用投与すると、体脂肪および体タンパク質動員が抑制され、ケトーシス予防と初回発情日数の遅延防止に効果がある。

[キーワード]乳用牛、ケトーシス、遊離脂肪酸(NEFA)、3-メチルヒスチジン、グリセリン、バイパスアミノ酸

[担当]静岡畜研・大家畜部
[代表連絡先]電話:0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  移行期の乳牛に、プロピレングリコール(PG)とバイパスアミノ酸(BA)を併用投与すると、PG単独投与よりもケトーシス予防効果が高い。しかし、PGは飼料安全法の規制がある。そこで、PG類似の糖原物質で、飼料安全法の規制がないグリセリン(GL、25%ペレット製剤)とBAの併用投与を行い、ケトーシス予防効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 分娩予定14日前の血中総コレステロール値が87mg/dl以下で、分娩後のケトーシス発症が予測されるホルスタイン種経産牛15頭を対象に、以下の3試験区を設定し、臨床観察、血液検査および初回発情日数の特定を実施する。

・4頭 無投与区
・4頭 プロピレングリコール+バイパスアミノ酸投与区(PG+BA区)
・7頭 グリセリン+バイパスアミノ酸区(GL+BA区)
PGの投与は250ml/d/head、GL投与は400g/d/headとし、両者とも投与期間は分娩14日前〜分娩日(14日間)とする。BAの投与は400g/d/head、分娩7日前〜分娩14日後(21日間)とする。GLは25%グリセリン含有ペレット製剤を使用し、BAはバイパスメチオニンを添加した大豆バイパスタンパク質製剤を使用する。(図1
2. 無投与区では4頭中3頭がケトーシスを発症したが(発症率75%)、PG+BA区およびGL+BA区ではケトーシスは発症せず(発症率0%)、ケトーシス予防に効果がある。
3. 分娩日におけるPG+BA区、GL+BA 区の血中遊離脂肪酸(NEFA)は無投与区より低い傾向を示し、同様に分娩日と分娩14日後におけるPG+BA区、GL+BA 区の血中3-メチルヒスチジンは無投与区より低く(P<0.05)、PG+BAおよびGL+BA投与は体脂肪および体タンパク質動員を抑制する。(図2
4. 無投与区の初回発情日数は64±21日で、PG+BA区36±17日、GL+BA区38±16日と比較して遅延がみられ(P<0.05)、PG+BAおよびGL+BA投与はケトーシスに継発する初回発情日数の遅延予防に効果がある。(表1)

[成果の活用面・留意点]
1. 乳牛のケトーシスおよびこれに継発する初回発情日数遅延の予防法として有効であり、酪農家の経営被害を軽減できる。
2. 25%グリセリンペレット製剤は配合飼料やTMR等に添加して容易に給与できる。そのため、従来のプロピレングリコールや液状グリセリンのように強制経口投与する必要がないため、普及性に優れている。
3. 移行期に高タンパク質飼料を給与している農場では、バイパスアミノ酸給与により一過性の乳房浮腫がおきる場合がある。


[具体的データ]

図1 プロピレングリコール(PG)、グリセリン(GL)とバイパスアミノ酸(BA)の投与量および投与日数
図2 血中NEFA値の推移 図3 血中3-メチルヒスチジン値の推移.
表1 初回発情日数

[その他]
研究課題名:乳牛における血中3-メチルヒスチジン濃度を指標とした代謝病予防・治療法の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年
研究担当者:赤松裕久、土屋貴幸、山岸健二、佐野文彦、笠井幸治
発表論文等:Hirohisa AKAMATSU et al. (2007) Journal of Veterinary Medical Science 69
                  (10) : 1091-1093

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