稲発酵粗飼料が主な粗飼料源の発酵TMRは泌乳牛用飼料として有用である


[要約]
稲発酵粗飼料を主な粗飼料源とし細断型ロールベーラで調製した発酵TMRは、エネルギー価やタンパク質の利用性、飼料摂取量および乳生産において、未発酵のフレッシュTMRと同等以上で、チモシー乾草を主な粗飼料源とする発酵TMRと同等である。

[キーワード]稲発酵粗飼料、細断型ロールベーラ、発酵TMR、栄養価、乳生産

[担当]三重科技セ・畜産研究部・大家畜研究課、新潟農総研・畜産研・酪農肉牛科
[代表連絡先]電話:0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  飼料自給率向上が喫緊の課題となっている現状で、稲発酵粗飼料は有用な国内産粗飼料といえる。しかし、発酵品質、栄養価にばらつきがあり、これが泌乳牛への利用を妨げる要因の一つになっている。その解消法として、大量調製により、ロール個々のばらつきを緩和し、貯蔵性、開封後の変敗抑制性に優れた発酵TMR方式の利用が考えられる。そこで、近年市販化された細断型ロールベーラ(細断型ベーラ)を用いて、稲発酵粗飼料を主な粗飼料源とした発酵TMRを調製し、原料を同じとする未発酵のフレッシュTMRや粗飼料源の異なる発酵TMRとの比較により、泌乳牛用飼料としての有用性を実証する。

[成果の内容・特徴]
1. 稲発酵粗飼料を25%混合したフレッシュTMR、それを発酵させたイネ発酵TMR、主な粗飼料源として稲発酵粗飼料と同じ割合でチモシー乾草を用いたチモシー発酵TMRおよび稲発酵粗飼料に稲わらサイレージを混合した稲わら混発酵TMRの4種類の飼料を供試し(表1)、乾乳牛を用いた窒素出納試験(実証試験1)と稲わら混発酵TMRを除いた3飼料について泌乳中期牛を用いた飼養試験(実証試験2)を実施している。
2. 細断型ベーラを用いて調製した発酵TMRは、粗飼料原料の種類にかかわらず、乳酸生成が促進され酪酸生成が認められず、VBN割合が低い高品質なものである(表1)。
3. イネ発酵TMRのエネルギー価は、フレッシュTMRと比べ低下することはなく、発酵によるエネルギーロスは認められない。また、イネ発酵TMRおよび稲わら混発酵TMRのエネルギー価はチモシー発酵TMRと同等である(表2)。
4. 尿中および蓄積窒素の分配率、乳タンパク質率、MUNおよびBUN値において各TMRに差はない。また、イネ発酵TMRの飼料タンパク質の利用性は、フレッシュTMRやチモシー発酵TMRと同等である(表2)。
5. イネおよびチモシー発酵TMRの乳量はフレッシュTMRに比べ増加する傾向にあるが、乾物摂取量および乳成分率は飼料間に有意な差は認められない。イネ発酵TMRの乾物摂取量および乳生産はチモシー発酵TMRと同等である。発酵TMRの自由摂取によるルーメン内発酵や血液性状の異常は認められず、給与上問題はない(表3表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 個々のロールベールにより発酵品質や栄養価にばらつきのある自給粗飼料を主たる粗飼料源として発酵TMRで利用する場合にも活用できる。
2. この成果は、2県4頭ずつ計8頭供試した4×4ラテン方格法による窒素出納試験と、2県6頭ずつ計12頭供試した3×3ラテン方格法による飼養試験で得られたものであり、供試した稲発酵粗飼料は、新潟が「夢あおば」を出穂後33日目に、三重が「ホシアオバ」を出穂後37日目に、収穫・調製し、その他の飼料は同一品を用いている。


[具体的データ]

表1 供試飼料の構成と発酵品質(両試験共通) 表2 消化率、栄養価および窒素出納(試験1)
表3 飼料摂取量および乳生産(試験2) 表4 ルーメン内容液および血液性状(試験2)

[その他]
研究課題名:稲発酵粗飼料、稲わら等自給粗飼料と地域資源を活用した発酵TMR調製・給与技術の開発
予算区分:委託プロ(えさプロ2系)
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:山本泰也、関 誠(新潟農総研)、乾 清人、平岡啓司、三宅健雄、
                  島津是之(新潟農総研)、高橋英太(新潟農総研)、伊藤徹三(新潟農総研)

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