牛受精卵の核移植技術を用いた効率的クローン産子生産


[要約]
と場由来卵巣から吸引したレシピエント卵子を成熟培養後、透明帯の一部を切開し、押し出しにより除核を行った。ドナー胚の透明帯を切開し、割球ごとに分離させレシピエント卵に注入、融合・活性化処理後、発生培養を行った。発生胚を移植し、双子および三つ子の黒毛和種受精卵クローン牛を誕生させた。発育調査を行ったところ、同様な発育の傾向が見られた。

[キーワード]核移植技術、受精卵クローン牛、発育調査

[担当]栃木酪試・生物工学部
[代表連絡先]電話:0287-36-0428
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地・家畜育種・繁殖・肉用牛
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  バイオテクノロジーをはじめとする各種先端技術は、21世紀の革新技術として期待され研究開発の成果を得てきている。この核移植技術により生産されたクローン牛は遺伝的に同一であることから、試験研究機関における供試牛としての試験精度の向上や、家畜改良としての活用が期待されている。しかし、生産効率が低く、安定的な一卵性複数産子の生産が困難な現状である。そこで、核移植技術の安定的な技術体系の確立を図ることが必要である。

[成果の内容・特徴]
  以下の試験を行い、平成16年に1卵性3つ子(A-1,2,3)、平成17年に1卵性双子(B-1,2)を誕生させる(表1)。
1. ドナー胚の採取
  黒毛和種に過剰排卵処理を行い人工授精後5〜6日目に子宮を潅流し回収された体内胚をドナー胚とする。平成15年度は4回の採卵を行い、ドナー胚として供試できる正常胚の割合は59.6%、平成16年度は5回の採卵で75.5%である(表2)。
2. 核移植胚の作出
  レシピエント卵は体外受精卵子を用い、と場由来卵巣から吸引した卵子を成熟培養後、透明帯の一部を切開し、押し出しにより除核を行う。ドナー胚の透明帯を切開し、割球ごとに分離させレシピエント卵に注入、融合・活性化処理後、発生培養を行う。クローン胚発生率は試験全体で29.1%(25/86)である。
3. 胚移植と受胎
  作出したクローン胚を発情7〜8日目の受卵牛の子宮に生胚移植する。平成15年度の受胎率は100%、平成16年度は40%である(表3)。
4. 受精卵クローン牛の発育調査
  誕生したクローン牛について、800日齢まで、体重及び体高について測定する。クローンA-1、A-2、A-3については同様な生時体重で、同様な発育を示した。B-1、B-2については生時体重は異なっていたが、同様な発育の傾向を示した(図1図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. クローン牛を試験研究の供試牛として活用することにより試験精度を向上することができる。
2. 核移植胚の活性化条件や培養条件を最適化し胚発生率や胚の品質を改善するとともに、受胚牛の適切な選定により受胎率を改善することにより生産効率を向上させることができると考えられる。


[具体的データ]

表1  クローン牛概要
表2  採胚成績
表3  核移植成績
図1 クローン牛(A-1,2,3) 図2 クローン牛(B-1,2)

[その他]
研究課題名:受精卵移植普及定着化事業 核移植技術共同試験(1996〜2004)
                  受精卵クローン産子の効率的生産モデルの実証
予算区分:県単(2005〜)
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:佐藤克彦、雫田容子、飛田府宣、斎藤栄、佐久間淳江、佐田竜一、岸善明、齋藤光男

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