乳牛の直腸温測定に基づく暑熱による繁殖性低下が疑われる雌牛の発見


[要約]
暑熱対策実施下の乳牛では発情徴候の強弱に気温の影響はあまりない。しかし、直腸温と相関の高い腟温度を調べると、夏期高温時には40℃まで上昇する牛を発見できる。この温度を体外培養で再現すると、卵子や体外受精卵の成熟率や発生率が低下している。

[キーワード]乳牛、直腸温度、繁殖性、暑熱対策

[担当]富山畜試・酪農肉牛課
[代表連絡先]電話:076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  近年、牛の受胎率は年々低下しており、空胎期間や分娩間隔の長期化が問題となっている。この原因の一つとして暑熱ストレスによる影響が考えられている。
  乳牛の平均直腸温度は38.5℃前後であるが、暑熱対策を講じていない場合は、気温が25℃を超えると直腸温度も上昇し始め、30℃以上の高温時には直腸温度も40℃に近づくことが知られている。しかし、そのような体温の上昇により、繁殖機能や受精卵の発生がどのような影響を受けているかは解明されていない。
  そこで、夏季の高温が牛の発情徴候や体温に与える影響や、熱ストレスがウシ卵子や受精卵の生存性に与える影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 暑熱対策が実施された乳牛において、発情徴候の強度や卵胞サイズ、排卵間隔は、気温の変化による影響が少ない(表1)。
2. 直腸温度と膣温度との相関係数は0.877であり、高い相関が認められる(図1)。
3. 気温が30℃以上になると、送風機と細霧装置による暑熱対策を行っていても、膣温度が40℃近くになる牛が存在する(図2)。
4. ウシ卵子の成熟率は、成熟培養初期18時間以上の熱曝露(40℃)により対照区(39℃)よりも有意に低くなる(図3)。
5. 体外受精後の胚盤胞への発生率は、発生培養初期24時間の熱曝露(40℃)により対照区(39℃)よりも有意に低くなる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 乳牛の繁殖管理において、夏季に繁殖性が低下する牛の発見には、膣温と相関の高い直腸温度を指標の一つとして活用できる。
2. 体温が気温の影響を受けて40℃程度に上昇すると、熱ストレスにより卵子や受精卵の生存性の低下が懸念されるため、夏期高温時には適切な暑熱対策が必要である。
3. 気温上昇に対する生体の反応には個体差があり、適切な暑熱対策を講じない場合、気温の影響を受ける牛がさらに増える可能性がある。


[具体的データ]

表1 発情日の気温と発情徴候の強度、卵胞サイズおよび排卵時期の関係
図1. 直腸温と腟温との関係 図2. 気温と腟温の関係
図3.熱曝露時間が卵子や受精卵の生存性に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:牛の簡易発情発見と卵巣機能強化による受胎性向上技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:沖村朋子、蓮沼俊哉、四ッ島賢二、紺博昭

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