ウシ未成熟卵子のBCB染色は高品質卵子のスクリーニングに有効である


[要約]
未成熟卵子を形態的にランク分けしBrilliant cresyl blue(BCB)で染色後、胚発生率を調査したところ、卵子の形態が良好でBCBに良く染色されるものは発生率が高く効率よく体外受精胚を作出できることから、この染色方法は高品質卵子の選抜に有効な手段である。

[キーワード]Brilliant cresyl blue、体外受精、胚作出

[担当]福井畜試・技術開発部・バイテク研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  品質の良い体外受精胚を得るためには、活力ある精子と優良な卵子が必要である。しかし、現在の未成熟卵子の形態による判断だけでは、高い発生率を得られていない。そこで、高品質卵子の選抜方法として、未成熟卵子にBCBで染色を行ない、卵子の形態ランク別に染色率と発生率を調査し、効率的な体外受精胚の作出方法について検討する。

[成果の内容・特徴]
  食肉センター由来の卵巣から吸引した未成熟卵子1、054個を用い、卵子の形態を家畜改良センター技術マニュアルにより、A(461個)、B(369個)、C(127個)、D(97個)の4ランクに区分する。BCB染色は、ランク分けした未成熟卵子をそれぞれ、0.4%ウシ血清アルブミン(BSA)添加m-PBSで3回洗浄し、26μM BCBin0.4%BSA添加m-PBS中で遮光下60分染色する。染色性により(−)、(+)、(++)の3ランクに区分する(図1)。染色後の成熟培養は5%子牛血清(CS)添加M199培地で18時間行う。和牛精液をパーコール液で洗浄後、無血清培地で6×106個/mlに調整し5時間媒精し、その後、5%CS添加CR1aa培地で9日間発生状況を観察する。
1. 未成熟卵子のBCB染色率では、形態ランクが良いものほど染色割合が高い。しかし、形態ランクが良いものでも約10%は染色されない(表1)。
2. BCB染色ランクと卵子の発生率は(++)では40.5%、(+)では34.3%であり、(−)では全て発生しない(表2)。
3. 染色ランク、卵子ランク毎の発生率は、BCB(++)で形態ランクAでは45.3%、同じくランクBでは36.3%である。しかし、BCB(−)のものは形態ランクA・Bであっても発生しない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 体外受精胚の効率的な作出に、未成熟卵子のBCB染色による選別は有効である。
2. BCB染色後の成熟率、発生時の細胞数の確認、受胎性の有無が必要である。
3. 脱色されやすいので、判定はなるべく早く選別する。


[具体的データ]

図1 実体顕微鏡による染色ランク
表1 未成熟卵子の形態別染色率
表3 ランクと染色性別の発生率

[その他]
研究課題名:受精卵移植技術高度定着化確立事業
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:谷村英俊、田中 健、笹木教隆

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