RT−PCR法によるウシ乳汁体細胞中のサイトカイン発現パターン


[要約]
高体細胞乳中の細胞の炎症性サイトカインの発現を調べると、インターロイキン−8が全てのサンプルで強く発現し、インターロイキン−6とインターフェロンγが一部のサンプルで弱く発現し、感染実験や培養細胞上での発現とは違ったパターンが見られる。

[キーワード]乳汁体細胞、サイトカイン、RT−PCR法、IL−8

[担当]福井畜試・家畜研究部・飼養管理研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  抗生物質に頼らない乳房炎の治療を目指して、乳房組織中における炎症の機序解明のために、免疫や炎症の調整機能に深くかかわるサイトカインの産生能が調べられている。これまでに培養乳腺上皮細胞におけるサイトカインの発現や感染実験条件下での乳汁中のサイトカイン発現等の報告はあるが、酪農の現場から採取した乳汁から分離した体細胞中のサイトカイン発現を調べた報告はない。そこで、高体細胞乳におけるサイトカインの発現状態を調べて、乳房炎の発生機序解明や発生防止対策につながる可能性のある基礎的研究を行った。

[成果の内容・特徴]
  当場で飼育している搾乳牛から、分房ごとに採取した乳汁中のうち、体細胞数がおよそ30万個/mlを超え、潜在性で慢性の乳房炎になったと思われるものを選び、その体細胞を材料に、炎症反応に関与すると言われるサイトカインの発現を調べた。
  Jai-Wei LEEらの方法(Vet.Res.37(2006)219-229)に従い、採取した乳汁中から遠心沈殿で体細胞を分離収集したうえでmRNAを抽出し、cDNAに逆転写してPCR法を行い、6種類のサイトカインについての発現を調べた(図1表1)。
 
1. 体細胞数の高低に関わらず、全てのサンプルで、インターロイキン(IL)−8が強く発現し、IL−6とINF−γが一部のサンプルで弱く発現する(表2)。
2. 細菌培養検査では、連鎖球菌(19/23検体)とブドウ球菌(9/23検体)が検出されるが、大腸菌は検出されない(表2)。
3. 感染実験で同様のサイトカインの発現を調べたJai-Wei LEEらの報告や、培養乳腺上皮細胞での発現を調べた岡田ら(酪農学園大学,2001年)の報告では、IL−12、GM−CSF、TNF−α等の発現も確認されているが、今回の臨床例では発現パターンが違っている。

[成果の活用面・留意点]
1. 搾乳牛の体細胞における2〜3のサイトカインの発現がRT−PCR法によって証明され、免疫応答や乳房炎の兆候をとらえる可能性が示唆された。
2. 今後、乳房炎を体細胞数、分離菌等で選別し、発現パターンを解析、分類する必要がある。


[具体的データ]

図1 方法 表1 発現を調べたサイトカイン
表2 RT−PCRと細菌検査結果

[その他]
研究課題名:体細胞数の少ない生乳生産技術の確立
予算区分:国補
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:松井 司、佐藤 智之、明間 基生、吉田 茂昭(福井畜試)、
                  荻野 聡介、竹内 正太郎(福井県立大)

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