低蛋白質アミノ酸添加飼料に対して酵素資材の添加は豚の消化率改善に有効


[要約]
養豚において環境負荷軽減に有効な低蛋白質アミノ酸添加飼料に複合酵素資材及びフィターゼを添加することで、飼料の乾物消化率が向上し、ふんの量が減るとともに、リンの排泄量を低減することができる。

[キーワード]酵素資材、フィターゼ、窒素、リン、低蛋白質飼料

[担当]富山畜試・養豚課
[代表連絡先]電話:076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  豚の排泄物中には、他の家畜と比較して窒素やリン等の環境に負荷を与える物質の含有量が高い。窒素の排泄量低減には、飼料中の蛋白質含量を減らすことが有効であり、近年、アミノ酸を添加した低蛋白質飼料の給与が行われてきている。一方で、飼料の利用性を高めるために様々な酵素資材が開発されているが、これら資材の低蛋白質飼料への添加が豚の消化率等に及ぼす効果については明らかにされていない。
  そこで、肥育前期(体重30〜70kg)の豚を用いて、低蛋白質アミノ酸添加飼料に複合酵素資材(ペクチナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ)を添加した場合の乾物消化率に対する改善効果を検証する。さらに、豚で利用できないフィチン態リンの分解酵素であるフィターゼを添加し、リンの排泄量低減効果を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 肥育前期の豚の必須アミノ酸要求量を満たすようにアミノ酸を添加した低蛋白質飼料に対して、乾物消化率等を改善するため複合酵素資材を0.3%、リンの消化率を向上させるためフィターゼを0.1%添加する(表1)。
2. 複合酵素資材及びフィターゼを添加した低蛋白質アミノ酸添加飼料を肥育豚に給与しても、市販飼料を給与した場合と同様に発育に遜色はない(表2)。
3. 複合酵素資材及びフィターゼの添加により、飼料中の乾物及びリンの消化率が向上するとともに、一日あたりのふんの排泄量も13%低減される(表3)。
4. 複合酵素資材及びフィターゼを添加した低蛋白質アミノ酸添加飼料を肥育豚に給与すると、市販飼料を給与した豚と比較して、ふん尿中へのリンの排泄量を11%、窒素の排泄量を34%低減できる(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 環境負荷物質の低減に配慮した肥育豚用飼料に酵素資材を添加する際の参考となる。
2. 低蛋白質アミノ酸添加飼料に酵素資材を添加しても、価格は市販飼料と同等である。
3. ふん中の窒素及びリン含有量は、市販飼料を給与した場合とほぼ同等であり、従来の堆肥と同様に取り扱いが可能である。
4. 本成果は肥育前期の豚に対する効果として得られた情報である。


[具体的データ]

表1 飼料の成分組成 表2 発育成績
表3 酵素剤添加効果
図1 一日あたりのリン及び窒素の排泄量(肥育前期 n=4)

[その他]
研究課題名:環境に負荷を与えない高発育能力豚に対応した飼養管理技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:水上暁美、小嶋裕子、中村真貴、水木亮史、新山栄一、廣瀬富雄、藤岡洋子、天橋崇

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