発酵リキッド飼料給与が中ヨークシャー交雑種の発育と肉質に及ぼす影響


[要約]
粗脂肪含量の高い発酵リキッド飼料を給与することで肥育前期においては配合飼料と同等の発育を示し、やや厚脂になる傾向があるが良好な肉質が得られる。中ヨークシャー(Y)交雑種のうちLY(Y50%交雑種)は肥育後期にも増体に与える飼料の影響が他の品種より少ない。

[キーワード]発酵リキッド飼料、中ヨークシャー交雑種、肉質

[担当]神奈川畜技セ・畜産工学部
[代表連絡先]電話:046-238-4056
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  食品残さの飼料化技術には発酵乾燥法などの様々な技術が開発されているが、水分の多い食品残さを有効利用できる発酵リキッド法は有効な飼料化技術と考えられる。当センターでは従来の食品残さでも良好な肉質を得られるとされている中ヨークシャー種及び同交雑種を用いて粗脂肪含量の高い発酵リキッド飼料に対する品種特性を検討してきた。生産コストの低減化と豚肉の高品質化による養豚経営の安定化を目的としてここでは肥育前期(体重約30kg)から発酵リキッド飼料を用いた肥育試験を実施し、発育・肉質の調査から品種特性と飼料の効果について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 生後11週齢のLY(Y50%交雑種)去勢4頭、雌4頭、LWYD(Y25%交雑種)去勢8頭及び対照としてLWD去勢6頭、雌2頭を供試した。去勢、雌が同数になるよう2区に分け、一方には県内の工場で主に厨芥を原材料に調製された発酵リキッド飼料、もう一方には通常の配合飼料を給与する(表1)。
2. 肥育前期には発酵リキッド飼料による発育への影響は認められない。肥育後期には、発酵リキッド飼料給与により発育が遅れる。しかし、LYは70kg〜90kgの期間で他品種に比べ、飼料が発育に及ぼす影響が少ない(表2)。
3. 枝肉調査の結果、発酵リキッド飼料給与により有意に歩留まりが高く、肩脂肪が有意に厚くなる。一方背腰長は試験区が有意に短くなる。肉色は発酵リキッド飼料給与により有意に淡くなる(表3)。
4. 肉質調査の結果、発酵リキッド飼料給与により筋肉内脂肪含量が有意に増加し、特にLWDでは顕著な増加が見られる。ドリップロス、クッキングロスには影響は認められない。シェアバリューはLYで発酵リキッド飼料給与により低下する(表4)。
5. 成績をもとに試算すると発酵リキッド飼料を30kgから出荷まで給与すると、約30%の飼料費低減効果があることが示唆される(表5)。

[成果の活用面・留意点]
1. 肥育前期には飼料による発育の差は少ない。一方で肥育後期の発育は配合飼料に比べ遅れることから、粗脂肪含量の高い発酵リキッド飼料は肥育前期用の飼料として有効と考えられる。
2. 中ヨークシャー交雑種のうちLYは、肥育後期にも増体に与える飼料の影響が他品種より少なく、発酵リキッド飼料に対する適性が比較的あるものと思われる。
3. 本試験は粗脂肪を12%も含む高脂質な発酵リキッド飼料を給与した試験成績によるものである。


[具体的データ]

表1 供試飼料の概要
表2 発育性の比較
表3 枝肉検査成績
表4 肉質検査成績
表5 飼料費低減効果(概算)

[その他]
研究課題名:食品残さ飼料給与豚の肉質改善に関する試験
予算区分:バイオリサイクル
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:山本 禎、前田高広、小嶋信雄、仲澤慶紀

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