デュロック種に導入された金華豚シェアバリューQTL領域の効果


[要約]
マーカーアシスト導入法によりデュロック種へ導入した金華豚のシェアバリュー(肉の柔らかさ)QTLは、110kgでのと殺においても、肉を柔らかくする効果があり、と殺1週間後でも有意に肉を柔らかくする。

[キーワード]ブタ、DNAマーカー、QTL、肉質、シェアバリュー

[担当]静岡中小研セ・高品質豚肉プロジェクト研究スタッフ
[代表連絡先]電話:0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  金華豚とデュロック種の交雑家系において、第2染色体に検出されたシェアバリュー(肉の柔らかさ)QTLは、マーカーアシスト導入法によって作出したブタにおいてもその効果が検証されている。しかし、これらの効果は、試験豚を70ないし90kgでと殺し、2日後に測定したものである。そこで本試験では、実際の出荷体重である110kgでと殺した豚について、シェバリューQTL効果を経時的に調査する。

[成果の内容・特徴]
1. 金華豚とデュロック種のF1に、デュロック種を戻し親とする2回の戻し交配を行なうと同時に、マイクロサテライトマーカーによる選抜を行うことで、金華豚のシェアバリューQTLをデュロック種に導入する。このQTLを導入した戻し交配第2世代豚同士を交配し、シェアバリューQTLについて金華豚型のホモの個体(JJ型)、デュロック種型のホモの個体(DD型)を作出し、110kg到達時点でと殺し胸最長筋を試験に供した。
2. と殺2日後のシェアバリューは、JJ型(6.5lb/cm2)がDD型(7.7lb/cm2)に対して有意に柔らかく、110kg出荷においてもシェアバリューQTLは肉を柔らかくする効果があることが確認される(図1)。1週間後もJJ型(5.0lb/cm2)がDD型(5.41lb/cm2)に対して有意に柔らかいが、2週間後には差は小さくなり(JJ型5.0lb/cm2、DD型5.4lb/cm2)、有意差も無くなる(図2)。
3. 遊離アミノ酸17物質の推移では、と殺2日後では差が無いが、1週間後にはJJ型(15.8μmol/g)がDD型(14.2μmol/g)に比べやや多く、2週間後にはJJ型22.7μmol/g、DD型20.1μmol/gとその差は大きくなる傾向がある(図3)。しかし、遊離アミノ酸量同様、肉の熟成により変化する核酸関連物質は各測定日を通じてアリル間に差は認められない。
4. その他、肉の柔らかさにも影響する発育、脂肪含量およびpHは、アリル間で差は見られない(表1)。
5. 今回の結果から、シェアバリューQTLの効果は一般的な体重での出荷で、消費者の手に渡る頃(1週間後)でも認められ、銘柄豚肉としての差別化に有用であることが示唆される。

[成果の活用面・留意点]
1. 金華豚のQTLを導入することでデュロック種のシェアバリューを低減させることができる。シェアバリューの測定値の差を消費者が識別できれば、豚肉の差別化が可能である。
2. QTL効果の発現機序は不明であり、広く選抜に利用するには責任遺伝子の特定が必要である。


[具体的データ]

図1 アリル型によるシェアバリューの差 図2 シェアバリューの推移
図3 遊離アミノ酸量の推移
表1 発育及び肉質の比較

[その他]
研究課題名:高品質豚肉の作出とトレーサビリティの確立
予算区分:県単
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:柴田昌利、井手華子、堀内篤、(静岡中小研セ)

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