可搬型近赤外分光装置による現地での「青島温州」着花量予測マニュアル


[要約]
「青島温州」の根中デンプン含有率による着花量予測を迅速に行うため、可搬型近赤外分光装置による着花量予測マニュアルを作成した。現地ほ場で根を採取し、輪切りにしてスペクトルを測定することにより、着花過少・過多樹を精度よく予測できる。

[キーワード]「青島温州」、近赤外分光法、生根、デンプン含有率、着花予測

[担当]静岡農林技研果樹研セ・生産環境
[代表連絡先]電話:054-334-4852
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  収穫直前の根中デンプン含有率から翌年の着花量を予測する樹体栄養診断は、従来法では根の乾燥粉末を用いるため、試料の調製に時間がかかる。迅速かつ簡易に診断できる技術とするため、樹から採取した根を簡単に調製するだけで、可搬型近赤外分光装置によりデンプン含有率を測定する方法を確立し、着花量予測のためのマニュアルを作成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「青島温州」において根中デンプン含有率による樹体栄養診断を行う場合、収穫直前に1樹につき1、2カ所から、直径約6〜8mm、長さ約5cmの根を採取する。表面に付着した土を落とし、十分な厚さで切断面が滑らかな輪切り切片を2つ以上作成する。
2. 可搬型近赤外分光装置は‘NOA2000’(測定波長1300〜2400nm、M製作所製)を用い、専用ソフトウェアをインストールしたノートパソコンで測定する。1.で作成した輪切り切片を根測定用フォルダにはさみ、その中心部の近赤外吸収スペクトルを測定する。スペクトルファイルを検量線作成に用いた‘The Unscrambler’で読み込み、デンプン含有率を算出する。
3. 静岡県における「青島温州」の樹体栄養診断の着花量予測基準では、収穫直前(11月下旬〜12月上旬)の根中デンプン含有率から、1%未満の樹は翌春の着花量が少ない、4%より多い樹は着花量が過剰、1〜4%の樹は着花量が中庸と判定する。
4. 近赤外吸収スペクトルから算出したデンプン含有率の平均値から、3.で示した基準をもとに調査樹を階級分けし、翌春の着花量を予測する。
5. 検量線は、PLS回帰分析法により作成する。デンプン含有率実測値は、ヨウ素比色法または酵素法により求める(杉山ら、土肥誌.72:81〜84.2001)。

[成果の活用面・留意点]
1. 同一樹でも、根の部位によってデンプン含有率に差がある場合がある。複数の切片を測定することにより、調査樹の栄養状態を正しく反映した結果が得られる。
2. 分光装置の特性や能力等が変わる場合は、検量線を作成し直す必要がある。
3. 採取、調製から測定まで時間がかかる場合は、クーラーボックス等に根切片を保管し、測定試料の温度を一定にすることで、精度の低下を防ぐ。
4. ここに示したのは、静岡県の「青島温州」における着花量予測基準である。他地域、他品種においても、基準を設定することで利用可能と考えられる。


[具体的データ]

○生根デンプン量測定による「青島温州」着花量予測マニュアル
1.「青島温州」において、収穫直前(11月下旬〜12月上旬)に1樹につき1、2カ所から、直径約6〜8mm、長さ約5cmの根を採取する。根表面の土を落とし、約3〜5mmの厚さで、切断面が滑らかな輪切り切片を2つ以上作成する。
2.‘NOA2000’の根測定用フォルダに輪切り切片をはさみ、中心のスペクトルを測定する。
3.スペクトルファイルを検量線作成用ソフト‘The Unscrambler’で読み込み、デンプン含有率を算出する。スペクトルによる測定平均値から、下表に示した分類を元に調査樹を判定し、翌春の着花量を予測する。

[その他]
研究課題名:連年結果樹の樹体生産力の解析
予算区分:交付金プロジェクト(カンキツ連年生産)
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:中村明弘、吉川公規

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