カロテノイドが増加するカキ「富有」の保管温度 |
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[要約] |
収穫後のカキを25℃で保管すると、10℃で保管する場合に比べて、果実中のカロテノイドの合成・代謝が活発に維持される。総カロテノイド量は9日間で収穫直後に比べて約2倍に増加し、特にリコペンは約3倍、β−クリプトキサンチン等は約2倍となる。 |
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[キーワード]カキ、富有、カロテノイド、保管 |
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[担当]岐阜農技セ・野菜・果樹部
[代表連絡先]電話:058-239-3133
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及 |
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[背景・ねらい] |
カロテノイドやビタミンCが豊富に含まれているカキは、収穫してから消費者が実際に口にするまでに、数日から10日程度の期間がある。しかし、その間の成分変動や保管温度別の変化についての知見は乏しい。機能性成分を増加させる保存条件を消費者に提示することは、カキの持つ機能性を広くPRでき、果実摂取量の増大に寄与できるものと考えられる。そこで、収穫後のカキの保管温度別カロテノイド含量の変動について明らかにする。 |
![]() [成果の内容・特徴] |
1. |
保管後の果肉色は、収穫時に比べて25℃保管ではカラーチャート値換算で0.8、室温保管(9日間の平均15.6℃)では同じく0.3、10℃保管では0.1増加し、増加量は保管温度が高い方が多い(表1)。 |
2. |
カロテノイド生合成に関与する酵素遺伝子の発現は、リコペン−ε−サイクレースを除いて温度依存傾向が認められ、保管温度が高いほどmRNAレベルが高い。このことから、保管温度が高いほどカロテノイドの合成・代謝は活発であると推察される(図1,2)。 |
3. |
25℃保管では収穫時に比べて保管9日後には、リコペンが約3倍、β―カロテン、β―クリプトキサンチン等が約2倍に増加する(図3)。 |
4. |
10℃保管では収穫時に比べて保管9日後には、リコペンが約2倍に増加するが、他のカロテノイドは同等から漸増である(図3)。 |
5. |
総カロテノイド量は、保管前に比べて保管温度が高いほど増加量は多く、保管9日後の25℃保管では収穫直後の約2倍に増加する(図3)。 |
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![]() [成果の活用面・留意点] |
1. |
スーパー等で購入した「富有」の果実をリビング等の暖かい室内で保存しておけば、同様な効果が期待でき、家庭で手軽にカロテノイドを増加させる保管方法として活用できる。 |
2. |
ヘタスキ果や傷果が混入すると保管中に軟化が発生する恐れがある。 |
3. |
必ずしも2300μg/100gF.W.の総カロテノイド量を保証するものではない。 |
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[具体的データ]
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![]() [その他] |
研究課題名:カキのβ―クリプトキサンチン増強技術の開発
予算区分:農水省委託プロ(食品総合)
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:新川猛、尾関健、加藤雅也(果樹研)、生駒吉識(果樹研)
発表論文等:新川ら(2008)園学研、7(1):123-128 |
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