鉢花における生分解性ポットの利用技術


[要約]
鉢花生産において、生分解性ポットを育苗に用いて直鉢替え栽培を行うことで、省力化が可能である。ポットは底面にカド穴4個を加え5穴とし、育苗期間によりデンプンの混合率を変えることで、慣行栽培と同等の生育が得られる。

[キーワード]生分解性ポット、直鉢替え、省力化、カド穴

[担当]岐阜農技セ・花き部
[代表連絡先]電話:058-239-3132
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  花きの生産・消費の段階で10億個以上のポット類が使用されているが、大部分は廃棄されており、ゴミの減量と共に環境に配慮した農業を推進する上で大きな問題となっている。そこで、注目を集める生分解性ポットを実用的なものに改良し、その利用技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. PBS(ポリブチレンサクシネート)が主成分の生分解性ポットで、実用強度を維持する分解度2に至るまでの日数は、デンプンを5〜10%混合したもので2ヶ月程度、PBS100%で約3ヶ月であった(図1)。
2. 直に植込むポットは、ポットに2%以上の開口部があると活着は良好であり(既報告)、9cmの育苗ポット底面にカド穴4個(直径10mm)を設け、底穴と併せて5個の開口部があれば、活着に良好な開口率となるため、鉢替え時にポットの分解度が不均一であっても、慣行の鉢替えと同等な生育が得られる(図2)。
3. 植替え時の強度とその後の順調な活着を考慮した場合、一般的な品目ではデンプン5%程度を混合したポットを用い、シクラメンの様に育苗期間が長いものではPBS100%のポットを用いる(図1)。
4. 育苗したポット苗を、仕上げ鉢にポットごと直接植替える「直鉢替え栽培」により、慣行の鉢替えを行う場合に比べ、10〜20%程度鉢替えに要する時間を短縮することが可能で、抜き取ったポットがゴミとならないため、ゴミの減量化にも繋がる(図3)。
5. 底面マット給水において、ミニバラ、バーベナ、カランコエ、ゼラニュウム、シクラメン、ガーベラ(データ省略)等で育苗時に生分解性ポットを利用し、直鉢替え栽培を行っても、ポリポットからの移植栽培と同等の生育が得られ、利用による障害は認められなかった(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果では3号ポットを使用している。ポットサイズが大きいものでは分解が遅くなり、小さいものでは分解が早まることから、分解速度と生育期間に留意する。
2. デンプンを混合したポットを利用する時は、肥料分の無い培養土の場合、生育初期に窒素飢餓を起こす(既報告)ため、窒素成分で120mg/L程度の緩効性肥料を添加するか、生育の初期段階から液肥施用を行う。
3. 生分解性ポットの分解性は、温度・水分量・有機質量(堆肥)に大きく影響を受けることから、利用する際は栽培温度・潅水方法・培養土等を考慮する。


[具体的データ]

図1 シクラメンにおける各種ポットの分解性
図2 ミニバラにおけるポット穴数・素材と生育・開花
図3 鉢上げに要する時間の比較(20鉢) 図4 各品目における直鉢替え栽培での生育

[その他]
研究課題名:鉢物・緑化苗等における生分解性ポットの改良及び利用技術の開発
予算区分:高度化事業
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:宇次原清尚、加藤克彦

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