高設無仮植育苗による省力的なイチゴ苗大量生産技術


[要約]
採苗床と親株床を分離、粉砕もみ殻を採苗培地とし、一次苗を親苗と同一栽培槽で生育させた高設無仮植育苗では、4月中旬親株定植で200本/m2程度の発根良好苗の生産が可能で、ポット育苗に比べ主要作業の労働時間を1/2程度に短縮できる。

[キーワード]イチゴ、高設無仮植育苗、省力化、苗分業栽培

[担当]埼玉農総研・園芸研究所・野菜・花担当
[代表連絡先]電話:0480-21-1115
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  イチゴ栽培では生産者の高齢化や炭疽病等の多発により、年々健苗の確保が困難になってきており、観光農業などでは安価であれば実取り苗の購入を希望する生産者も多い。一方、イチゴ栽培では育苗から収穫まで労働時間が長い上、屈み仕事が多く、省力・軽作業化が遅れている。そこで、苗分業栽培によるイチゴ産地の維持・活性化と観光・直売農業の発展を図るため、高設無仮植育苗による省力的なイチゴ苗大量生産技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 採苗方式は高設栽培等に用いる樹脂製の栽培槽を親株定植床、パイプ及びぬき板、発泡パネルにより作成した幅90cmの隔離床を採苗床とし、両者を組合わせた地上70cmの高さの高設無仮植育苗である(図1)。親株床にピートモスとヤシガラを主体とした市販の高設栽培用土、採苗床に粉砕もみ殻を用い、一次苗は親株と同じ栽培槽に、二次苗以降は採苗床に誘導する。灌水と施肥はEC 1.0mS/cmに調製した培養液を、タイマーにより1日1〜2回・5分/回、親株床は点滴、採苗床は灌水チューブで行う。
2. 本方式を用いた採苗本数は、4月中旬親株定植で197本/m2(9月上旬採苗)、5月中旬定植で134本/m2(9月下旬採苗)である(データ省略)。ポット苗に比べ、花芽分化が遅く、年内収量も少ないが、3月末までにはほぼ同等の収量に追いつく(表1)。
3. 1,000m2当たり7,500株の本圃定植苗の生産・定植に要する作業時間は79.4時間で、ポット育苗の1/2程度である(表2)。また、本方式では採苗した苗の調整以外は立ち作業となり、管理に伴う屈み作業をなくすことができる。
4. 1,000m2の施設に本方式を導入し11万本を採苗(採苗数200本/m2、施設利用率70%とした場合)、1株当たり40円で販売した場合の所得を試算すると、苗を調整した場合で110万円、調整しない場合で174万円程度となる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 花芽分化の早晩・揃いを重視しない観光・直売生産者に苗を提供する苗分業栽培に活用できる。
2. 採苗床の粉砕もみ殻は十分灌水してから採苗に供する。
3. 親株床は一次苗の誘導で密植になりやすく、輪斑病が発生しやすいので注意する。
4. 子苗が混み合わないよう、ランナーを適宜、配置する。
5. 未分化苗を含むので、早植えは避ける。


[具体的データ]

図1 高設無仮植育苗の採苗システムと採苗適期の苗の状態 写真左:採苗床(左)と親株床(右)、写真中央:同一栽培槽の親株と一次苗、写真右:9月19日撮影の採苗適期の苗
表1 育苗方法の違いと苗質、収量
表2 育苗方法と作業時間 表3 苗生産と実取り生産の経営比較

[その他]
研究課題名:軽作業なイチゴ苗大量生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:小林延子、峯岸直子

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