チャ生葉の低温及び長時間保管による被覆茶の覆い香発揚と関連成分への影響


[要約]
被覆栽培したチャ生葉を低温(5℃)で長時間(100時間)保管することによりメチルメチオニンスルフォニウム(MMS)、ジメチルスルフィド(DMS)は増加し、覆い香は強く発揚する。

[キーワード]チャ、被覆栽培、生葉保管、覆い香、MMS、DMS、玉露

[担当]静岡農技研(茶研セ)・新商品開発(加工)
[代表連絡先]電話:0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  静岡県内では朝比奈地域を中心とする岡部町で古くから玉露やかぶせ茶が生産されている。しかし、近年流通業者、生産者から覆い香の不足が指摘され、個性ある茶作りを推進するため製造工程における覆い香の発揚技術が求められている。そこで生葉の保管条件である温度、時間が官能審査による覆い香の強さ、覆い香の主たる成分といわれるDMS、その前駆物質であるMMSに及ぼす影響を検討し、覆い香の発揚のための保管条件を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 「やぶきた」の第2.5葉開葉期に黒色寒冷紗(PE、遮光率95%、ラッセル織り)を用いて15日間直接被覆したチャ生葉を低温(5℃)で長時間(100時間)保管した後に製造された茶は高温(20℃)保管後に同様の処理で製造された茶と比較して覆い香が強い(図1)。100時間以後は覆い香の発揚効果は小さい。
2. 覆い香の主たる成分とされるDMSはチャ生葉の低温(5℃)、長時間(100時間)の保管により増加する(図2)。
3. DMSの前駆物質であるMMSは低温(5℃)、長時間(100時間)の保管により増加する(図3)。
4. 高温(20℃)で保管された生葉を用いて製造された茶は覆い香の発揚は少なく、DMS及びMMSは50時間後に減少し、ピーク時の含有量も少なく(図1)、約24時間後から葉傷み臭が生じる(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 当該成果は一番茶の少量生葉を恒温恒湿度に制御できる生葉保管室(90%RH)において保管し、マイクロ波殺青処理および熱風乾燥(60℃)で製造された試料について得られたものであり、通常の製造工程で得られた茶の品質、成分ではない。
2. 現場において生葉保管後に被覆茶の製造を行う場合は、特に保管時の茶温上昇に注意する。


[具体的データ]

図1 チャ生葉の保管条件と官能審査による覆い香の強さ 図2 チャ生葉の保管条件とジメチルスルフィド(DMS)の含有量
図3 チャ生葉の保管条件とメチルメチオニンスルフォニウム塩(MMS)の含有量

[その他]
研究課題名:被覆茶の香気品質と成分に及ぼす生葉保管条件の影響
予算区分:県単
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:後藤正

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