良質で栽培適性に優れる青大豆新品種候補系統だいず「東山青211号」


[要約]
だいず「東山青211号」は「信濃青豆」より晩熟な青大豆系統である。種皮、臍、子葉が緑色で外観品質に優れ、豆腐の食味が良い。着莢位置が高く倒伏は少なく、ダイズモザイク病と紫斑病に抵抗性である。

[キーワード]青大豆、栽培適性、紫斑病、ダイズモザイク病、豆腐加工適性

[担当]長野中信農試・畑作育種部
[代表連絡先]電話:0263-52-1148
[区分]作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  種皮と子葉が緑色のいわゆる青大豆からは、淡緑色の特色ある豆腐が製造できる。長野県では、「信濃青豆」や在来の青大豆が緑色豆腐の原料として利用されているが、栽培特性が劣り生産が不安定である。青大豆は豆腐のほか、ゆで豆・浸し豆にも利用されることから、外観品質の優れた良質な原料が求められる。奈良県では、中山間地域で在来の青大豆が栽培されているが、晩生で繁茂性のため機械化体系に適さないことから、平坦地の大規模地帯に普及しなかった。
  そこで、緑色豆腐など特色ある大豆製品原料として活用できる青大豆で、普通大豆並みの栽培が可能な良質・安定生産性の品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「東山青211号」は、平成6年に長野県中信農業試験場(農林水産省大豆育種指定試験)において、青大豆育成系統「東山系T751」を母、「東山系R906」(後の東山179号)を父とした人工交配から育成した系統である(表1)。
2. 長野県では「信濃青豆」より晩熟で、奈良県では在来の青大豆より早熟である(表1)。
3. 倒伏が少なく、最下着莢節位高が高い(表1)。
4. 収量は、標播栽培では「信濃青豆」にやや優るが、「タチナガハ」、「サチユタカ」など普通品種よりは少ない(表1)。
5. 種皮、臍、子葉が緑色で、「信濃青豆」に比べ緑が濃く鮮やかな外観である(表1表2)。
6. 紫斑病とダイズモザイクウイルスに強く(表3)、紫斑粒と褐斑粒の発生が少ない(表1)。
7. 豆腐が淡緑色で、味に甘味がある(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培適地は関東・東山、近畿地域で、奈良県で準奨励品種、長野県で普及技術として採用予定である。
2. 商品性の高い緑色豆腐やゆで豆・浸し豆用に、良質な青大豆を安定生産することができる。
3. 収穫が遅れると日光により種皮の緑色が退色するので、適期収穫に努める。
4. ダイズシストセンチュウ抵抗性がないので連作を避け、発生したことのある圃場へは作付けしない。


[具体的データ]

表1 「東山青211号」の特性一覧表
表2 「東山青211号」の子実の色調
表3 「東山青211号」の病虫害抵抗性、機械収穫適性、加工適性

[その他]
研究課題名:大豆新品種育成試験
予算区分:指定試験
研究期間:1994〜2007年度
研究担当者:矢ケ崎和弘、山田直弘、坂元秀彦、谷口岳志、袖山栄次、高松光生、高橋信夫、元木悟、牛山智彦、重盛勲、田中進久、西牧清、小林勉

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