多収・高品質で精米適性の優れる酒造好適米新品種候補「三重酒18号」


[要約]
「三重酒18号」は「コシヒカリ」とほぼ同熟期の早生の酒造好適米品種である。耐倒伏性が高く、酒造好適米としては多収で、精米適性に優れる。製成酒は旨味があり、優しい味わいである。

[キーワード]酒造好適米、多収、精米適性、三重酒18号

[担当]三重科技セ・農業研究部・伊賀農業研究室、作物研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6354
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  県内の酒造業者では、吟醸酒や純米酒の原料米として「五百万石」の使用割合が高いが、この品種はコシヒカリを中心とした本県の作付け体系に合わないため、県内での栽培はほとんどない。そのため県内の酒造業者からは、地元産材料にこだわった商品開発のための、純米酒向け酒造好適米品種の育成が強く求められてきた。そこで、栽培適性と酒造適性の両面に優れる酒造好適米品種の育成を行う。

[成果の内容・特徴]
1. 「三重酒18号」は1996年に、多収で耐倒伏性に優れる「越南165号」を母とし、中山間地向け酒造好適米品種「夢山水」を父として人工交配を行った組合せから育成された酒造好適米系統である(表1)。
2. 出穂期、成熟期は「コシヒカリ」とほぼ同じで、三重県では「早生の中」に属する(表1)。
3. 稈長は「五百万石」よりやや短く、「コシヒカリ」より10cm程度短い。穂長は、「コシヒカリ」よりやや長い。穂数は「コシヒカリ」より少なく、「五百万石」と同程度で、草型は”穂重型”である。耐倒伏性は「五百万石」、「コシヒカリ」より強い”中”である(表1)。
4. 葉いもち圃場抵抗性は”中”で、穂いもち圃場抵抗性は”弱”であるが、いずれも「コシヒカリ」よりはやや強い。また穂発芽性は”やや難”で、脱粒性は”難”である(表1)。
5. 収量性は「コシヒカリ」とほぼ同程度で、「五百万石」に比べ多収である(表1)。
6. 玄米千粒重は「五百万石」とほぼ同程度である。玄米の外観品質は、心白発現率は50%程度と「五百万石」に比べて少ないが、透明感があり良好である。また玄米粗蛋白含有率は「五百万石」と同程度の値である(表1)。
7. 70%精米時の砕米率は「五百万石」に比べて明らかに少なく、精米適性は良好である。また吸水性、消化性は「五百万石」とほぼ同程度である(表2)。
8. 製成酒の日本酒度と酸度は「五百万石」とほぼ同程度であるが、官能評価は”旨味がある優しい味わい”で、”キレがあるが、線が細い”「五百万石」とは異なる酒質を示す(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 多収・高品質で酒造適性に優れる早生品種として、温暖地に適する。
2. 葉いもちおよび穂いもちには強くないので、適期防除を行う。
3. 淡麗な「五百万石」とは異なる、”旨味のある優しい味わい”の清酒ができるため、五百万石と差別化を図った製品開発が期待できる。


[具体的データ]

表1 「三重酒18号」の特性概要
表2 原料米分析結果(2005〜2007年の平均値)
表3 試験醸造の結果

[その他]
研究課題名:新しい三重の酒造好適米品種の育成と地域特産化事業、三重のニューライス開発事業
予算区分:県単
研究期間:1996〜2007年
研究担当者:山川智大、村上高敏、宮本啓一、橘尚明、橋爪不二夫、松井未来生
発表論文等:種苗法に基づく品種登録申請(2007年10月)

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