飼料イネ作付け後の牛糞堆肥施用は小麦の収量・品質を高める


[要約]
二毛作での作業競合を回避するため、飼料イネ作付け後に牛糞堆肥2t/10aを施用することにより、あと作の小麦の収量及び外観品質は向上し、子実粗蛋白質含有率もランク基準に近づく。

[キーワード]飼料イネ、牛糞堆肥、小麦、収量・品質

[担当]埼玉農総研・戦略プロジェクト第1研究担当、埼玉農総研園芸研究所・露地野菜担当、
          埼玉農総研水田農業研究所・生産環境担当
[代表連絡先]電話:048-521-5041
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  二毛作地帯を主体に飼料イネ栽培の導入が進み、耕畜連携体制により、飼料イネ作付ほ場へ地域内畜産農家由来の牛糞堆肥の施用が行われているが、二毛作栽培体系では、堆肥施用と飼料イネ移植作業が競合することから、施用時期は飼料イネ収穫後から小麦茎立期前までである。
  有機質資源の地域内循環と飼料イネ作付けの定着条件の解明を目指し、沖積土壌水田地帯で、牛糞堆肥施用が後作小麦に対する影響を現地農家ほ場で検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 対象地域は表1に示す沖積土壌水田地帯で、堆肥施用は平成16年度(17年産小麦)から実施している。
2. 現地ほ場に施用されている堆肥成分は表2のとおりである。
3. 小麦では、前作が水稲・堆肥施用なしの場合に比較して飼料イネ作付け・堆肥施用により収量は9%向上する。子実の外観品質は向上し(一等に相当)、粗蛋白質含有率はランク区分基準値(9.7〜11.3%)となる(表3)。夏期休耕の場合と比較し、飼料イネ作付け・堆肥施用により収量は17%、外観品質は1ポイント向上し、粗蛋白質含有率はランク区分基準値に近づく(表3)。
4. 播種後の大雨など天候不良により19年産小麦収量は大きく減収するが、このような年次であっても夏期の飼料イネ作付とその後の堆肥施用により480kg/10a以上が確保される(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 小麦品種は‘農林61号’での結果である。
2. 関東地方平野部の排水が良好な水田地帯で、水稲と小麦を組み合わせた二毛作地域に適用できる。


[具体的データ]

表1 対象地域の作付体系
表2 牛糞堆肥成分の分析値
表3 現地調査ほ場の小麦栽培体系と調査結果 (H17〜19産の平均)
図1 小麦子実収量の年次推移

[その他]
研究課題名:飼料イネの生産利用の経営的評価並びに耕畜連携条件の解明と資源循環型地
                  域営農システムの策定
予算区分:地域総合(関東飼料イネ)
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:酒井和彦、畑原昌明、設楽秀幸

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