イネ科雑草アシカキの畦畔から水田内への侵入は水稲除草剤で抑制できる


[要約]
イネ科多年生雑草アシカキの発生源は畦畔の越冬株であり、移植水稲では畦畔から侵入する匍匐茎が問題となる。ベンゾビシクロン、ピラクロニルを含む水稲用除草剤を水田内に散布することにより水田内へ侵入する匍匐茎の伸長を抑制できる。

[キーワード]アシカキ、ベンゾビシクロン、ピラクロニル、畦畔、除草剤

[担当]三重科技セ・農業研究部・伊賀農業研究室
[代表連絡先]電話:0598-42-6354
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  イネ科多年生の水田雑草は11種が報告されており、これら雑草による水稲生育や水稲作業への影響が問題となっている。これらのうちキシュウスズメノヒエはシハロホップブチル剤を用いた本田防除法が確立されているが、アシカキに対しては効果が低いため、農家は頻繁な畦畔の刈払いや、本田に侵入したアシカキ茎の手取り作業といった多労を強いられている。そこで、アシカキに対して有効な除草剤成分を検索し、本田での省力的な除草方法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 畦畔にアシカキ、サヤヌカグサが発生する水田において、アシカキと同属のサヤヌカグサは水田畦畔とともに水田内部での発生が散見される。一方、アシカキは畦畔部の発生量にかかわらず水田内部での発生は認められない。このことから、水田におけるアシカキ防除の対象は畦畔の越冬株から発生する匍匐茎である(表1)。
2. 移植したアシカキ茎に対して、ピラクロニルは褐変症状の抑草作用を、ベンゾビシクロンは白化症状の抑草作用があり、両成分の混合剤はさらに強い抑草効果を示す(表2)。
3. ベンゾビシクロンとピラクロニルの混合剤を通常の水田雑草防除を目的として移植後5日、ノビエ2.5葉期に使用した場合においても、畦畔から侵入するアシカキ匍匐茎に対して一定の抑草効果が認められる。さらに、移植後30日頃における処理においても匍匐茎に対して抑草効果がある(表3)。
4. ベンゾビシクロンのみを含む除草剤でも、ピラクロニルとの混合剤よりやや効果が小さいものの、アシカキ匍匐茎に対して抑草作用を示す(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 除草剤処理時期にアシカキ匍匐茎が水田に侵入していない場合には、除草剤の抑草効果が低下する可能性がある。
2. アシカキ切断茎や越冬株は湛水中で活着が可能であり、代掻きから移植後の湛水管理が不良な場合には水田内部でも発生する可能性がある。
3. ベンゾビシクロン、ピラクロニルを含有する除草剤ごとに使用時期が異なっており、移植後30日が使用時期の最晩限である。


[具体的データ]

表1 アシカキ、サヤヌカグサの畦畔と水田内部での発生状況(2007) 表2 水稲土壌処理除草剤のアシカキへの効果
表3 畦畔から侵入するアシカキ匍匐茎に対する水稲用土壌処理除草剤の効果

[その他]
研究課題名:水田雑草アシカキの生態と防除に関する研究
予算区分:植調「研究調査啓発事業」
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:神田幸英、山川智大

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