摘心による大豆「フクユタカ」無中耕無培土栽培の生産安定化


[要約]
耐倒伏性が劣るフクユタカの無中耕無培土栽培でも、開花期前の摘心処理を組み入れることで倒伏が軽減され、慣行の中耕培土栽培と同等の収量が確保できる。

[キーワード]大豆、摘心、フクユタカ、無中耕無培土、倒伏

[担当]三重科技セ・農業研究部・作物研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6354
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  三重県では大豆の作付け面積が増加しており、経営規模の拡大が進んでいる。しかし、労力不足から適期播種や適期管理の実施が困難な状況にあり、無中耕無培土栽培(2007年度:459ha(17%))が急増している。フクユタカの無中耕無培土栽培は7月末以降の晩播対応技術として指導しているが、全経営面積を無中耕無培土栽培する経営体も増えつつある。そこで、愛知農総試が開発した乗用管理機搭載型摘心機による省力摘心技術を7月上中旬播種の無中耕無培土栽培に適用し、中耕培土に代わる省力的な倒伏軽減技術としての可能性を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 開花期の4〜7日前に主茎先端より5cm下を目標に摘心処理すると、主茎の60%程度が摘心され、処理直後の草高は20cm程度低くなり、葉面積指数は低下する(表1)。
2. 無中耕無培土栽培では開花期の葉面積指数が大きいほど倒伏は大きくなる(図1)。摘心処理することで開花期の葉面積指数は無処理に比べて0.5〜1小さくなり、倒伏は1〜2ランク軽減される(表1図1)。
3. 7月上中旬播種の無中耕無培土栽培でも、摘心処理することで倒伏による草姿の乱れ、受光体勢の悪化が軽減される(図2)。無処理と比べると節数は同等〜やや減少するが着莢数は増加し、多収となり、慣行の中耕培土栽培と比べても同等の収量を確保できる(表1)。
4. 摘心処理は、倒伏の軽減によりコンバイン収穫の損失低下に効果がある(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. フクユタカの無中耕無培土栽培の生産安定に活用できる。
2. 本情報は、慣行中耕培土栽培の主茎長が65〜70cmとなる栽培条件で、条間45cmおよび65cmで無中耕無培土栽培したフクユタカに摘心処理した試験結果に基づく。
3. 使用した摘心作業機は農機メーカーが市販化に向けて検討中である。
4. 摘心処理を行うと条間部の遮光率が低下し、雑草の要防除期間が長くなると考えられることから、除草体系について検討する必要がある。


[具体的データ]

表1 摘心が生育、収量に及ぼす影響
図1 開花期の葉面積指数と倒伏程度の関係(2006、2007)
図2 成熟期の草姿(2006) 図3 収穫期の倒伏程度と収穫損失の関係(2006)

[その他]
研究課題名:大規模水田営農を支える省力・低コスト技術の確立
予算区分:委託(新稲研)
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:北野順一、中山幸則、中西幸峰

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