ダイズ調湿種子と殺菌剤種子粉衣の併用による冠水時の出芽安定化


[要約]
圃場の冠水時に出芽向上効果をもつダイズ種子の調湿処理は、高地温や冠水の長期化に伴い雑菌の影響を受けやすくなりその効果が低下する。そのため、調湿種子に殺菌剤を種子粉衣することにより出芽の安定化が図られる。

[キーワード]ダイズ、湿害、調湿種子、殺菌剤種子粉衣、出芽安定化

[担当]中央農研・大豆生産安定研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8813
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作、作物
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  播種後に圃場が冠水しやすい梅雨期のダイズ播種で出芽の安定化を図るためには、調湿種子の利用が有効であるが、その効果は圃場や播種時の天候等により変動しやすく、その原因究明と対策が求められている。殺菌剤の種子粉衣も出芽期の冠水害軽減に有効な場合もあることから、出芽時の冠水害の原因として、雑菌などの生物的要因も考慮する必要がある。そこで、出芽時の冠水害に対する土壌滅菌の効果を明らかにすると共に、播種後冠水処理における調湿種子と種子粉衣殺菌剤による出芽安定化効果を解析し、多湿条件下におけるダイズの出芽安定化技術の開発を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 種子浸漬処理時の水温が高いほど、処理期間が長いほど、種子の物理的破壊の指標となる導電率が上昇し発芽率が低下しやすいが、調湿種子を用いると種子の物理的破壊が抑制され、それら条件下でも出芽率が向上する(図1)。
2. 土壌を滅菌すると冠水処理下において種子調湿による出芽安定化効果が認められるが、非滅菌土壌では調湿種子を使用しても出芽率が極めて低く、またその障害程度は高温ほど著しい(図2)。このことから、冠水時の出芽不良の原因として雑菌の影響は非常に大きく、種子調湿だけでは冠水害を十分には回避できない場合がある。
3. 播種後に冠水処理した圃場では、種子の調湿と殺菌剤粉衣(ベノミル・チウラム水和剤、乾燥種子重量の0.4%)の両処理とも出芽率向上に貢献するが、それぞれの単独よりも両者を併用した処理で最も出芽が良好となり、対照区に匹敵する出芽率を示す(図3)。
4. これらのことから、ダイズ出芽時の冠水害では雑菌の影響が大きいこと、調湿種子と種子粉衣殺菌剤を併用することにより高い出芽安定化効果が得られることが明らかになった。

[成果の活用面・留意点]
1. ベノミル・チウラム水和剤は紫斑病を対象に種子粉衣処理が農薬登録されている。但し、圃場によってはこの剤が効かない病害(茎疫病等)が発生する可能性がある。
2. 調湿、殺菌剤種子粉衣を行っても冠水期間が長期に及ぶ場合は出芽が著しく低下するので、長期間に渡り滞水しないような排水対策が不可欠である。


[具体的データ]

図1 冠水時の温度条件、処理期間が発芽および導電率に及ぼす影響
図2 48 時間冠水処理時の温度および土壌滅菌が出芽率へ及ぼす影響
図3 播種後の冠水処理が出芽率へ及ぼす影響

[その他]
研究課題名:大豆生産不安定要因の解明とその対策技術の確立
課題ID:211-c
予算区分:加工プロ
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:国立卓生、千田洋(宮城古川農試)、濱口秀生、加藤雅康、田澤純子、島田信二

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