ヒドロゲルを利用したダイズの簡易種子水分調整法


[要約]
粒状ヒドロゲル(可溶性ケイ酸17%、水分83%)を種子に加えて均一にまぜ、24時間25℃で密封静置することにより、播種直後の冠水に強い15%水分のダイズ種子を調製できる。ヒドロゲルの添加量は、種子の新鮮重と水分から算出できる。

[キーワード]ダイズ、冠水、発芽、調湿

[担当]中央農研・土壌作物分析診断手法高度化研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8481
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作、関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  低水分のダイズ種子では、播種直後の降雨による冠水で急激な吸水が生じ、出芽不良になる場合のあることが知られている。その予防には、種子水分を15%程度に水分調整して播種することが効果的であるとの知見がある。しかし調整に際しては、急激な加水による種皮のシワ、裂皮、高温高湿条件によるカビの発生等に注意を要する。本成果情報は、高水分保持材であるヒドロゲルを利用して15%水分のダイズ種子を調製する技術である。また、酸素不足になりやすい密閉環境が調湿効果に及ぼす影響の検討結果も併せて示す。

[成果の内容・特徴]
1. 水分が既知のダイズ種子に対して、所定量の粒状ヒドロゲル(可溶性ケイ酸17%、水分83%、直径5〜8mmの硬い球状粒)を均一に混ぜて、容器に密封後24時間静置するだけで、目標水分に調整できる。目標水分15%の調整に要するヒドロゲル所要量は、式1を用いることにより、種子新鮮重と種子水分から算出できる。
2. ヒドロゲルは水蒸気として水分を供給することから、種皮への急激な水移動が起こらず、シワや裂皮の発生が防止できる。また、調整完了時点で容器内容物は平衡水分に達するので、24時間以上そのまま放置しても、目標水分以上にはならない。
3. 目標水分15%の場合、ダイズ種子の水分活性は0.6前後であり、種子が直接水に触れない状態で調製するため、カビ発生条件である水分活性0.8以下の状態を維持しやすい。
4. 密封可能なポリエチレン袋を使用して、標準偏差0.3%以内(新鮮重200gの場合)の精度で目標水分15%に調整できる(図1)。
5. 容器内雰囲気が大気または窒素ガス(酸素不足状態を想定)の条件で調製した種子の冠水後発芽試験結果では、発芽率、導電率(溶出固形物量の指標)ともに、処理区は対照区よりも改善され、酸素不足の影響はみられない(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. ヒドロゲルは1kgあたり約200円で供給可能であり、10aあたり5kg播種する場合には水分10%の種子を約100円のコストで15%に水分調整できる。また、ケイ酸肥料としても販売されており、取り扱い上の問題はない。調整用の容器は水蒸気が逃げないように密封可能なものであれば、ビニール袋や樹脂コンテナも利用可能である。
2. ヒドロゲルの直径は脱水により縮小するため、種子サイズが中〜大粒の場合には5mmメッシュの篩により分離できる。
3. ヒドロゲル量を増やすことにより、目標水分到達時間を短縮することができる。ただし、低温下で倍量加えた場合には、容器内の結露によりシワ粒が発生する場合がある。また、目標水分を大幅に超えないように、種子水分をこまめにチェックする必要がある。


[具体的データ]

式1 ヒドロゲル添加量計算式  H = M (0.28 − 0.018 Q)
図1 ヒドロゲル(HG)調湿時の種子水分経時変化 図2 1日冠水後の調湿種子発芽率と導電率

[その他]
研究課題名:ナノテクノロジーを利用した作物生理計測・制御技術の開発
課題ID:521-a
予算区分:基盤
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:乙部和紀、伊藤睦弘(富士シリシア化学)、渡邊和洋

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