コムギのふ色遺伝子Rg1 と低分子量グルテニン・サブユニットGlu-B3 座との連鎖分析


[要約]
小麦の生地物性に寄与する低分子量グルテニン・サブユニットのGlu-B3 座は、1B染色体短腕に座乗するふ色遺伝子Rg1 と組換価約0.8%、地図距離約0.8cMで強く連鎖している。

[キーワード]コムギ、連鎖分析、低分子量グルテニン・サブユニット、ふ色

[担当]愛知農総試・作物研究部・小麦育種指定試験地
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  東海地域では、色相と食感に優れたイワイノダイチが小麦奨励品種に採用されたが、本品種は実需者からタンパク質含量がやや低く、グルテンの質が弱いことが指摘されている。小麦の貯蔵蛋白質であるグルテニンの遺伝子型は小麦粉生地物性に大きく影響するとされ、低分子量グルテニン・サブユニット(LMW-GS)の遺伝子座の一つであり、1B染色体短腕に座乗するGlu-B3 座が同じ染色体に座乗するふ色遺伝子Rg1 と共分離することが報告されている(藤井ら 2006)。そこで、本研究では、グルテニン遺伝子型の改良により生地物性が改善されたコムギを、ふ色により効率的に間接選抜する方法の有効性について検討するため、ふ色の観察調査及びGlu-B3 座の遺伝子型を判別できるDNAマーカーを利用した遺伝子型調査を行い、両遺伝子間の連鎖程度(組換価)・地図距離を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 東山40号(ふ色褐,Glu-B3g )/ニシノカオリ(白,d )のF2集団254個体のふ色及びGlu-B3 座遺伝子型の分離比は、それぞれ3:1、1:2:1の分離比によく適合する。また、両遺伝子座の組換え個体は、褐/d、白/ヘテロがそれぞれ1個体のみで、両遺伝子座には強い共分離が認められる(表1)。
2. 関東107号(白,g )/はつほこむぎ(褐,i )のF2集団235個体のふ色及びGlu-B3 座遺伝子型の分離は想定される分離比にそれぞれよく適合する。また、両遺伝子座の組換え個体は、白/ヘテロが2個体のみで、両遺伝子座には前述のF2集団と同じく強い共分離が認められる(表2)。
3. 今回の解析に使用したF2集団では、ふ色の分離比は想定される3:1の分離比によく適合したことから (表1表2)、東山40号とはつほこむぎのふ色(褐ぷ)はRg1 遺伝子による発現と考えられる。
4. Rg1 遺伝子により発現するふ色とGlu-B3 座の遺伝子型とのMAPL98(鵜飼)を用いた連鎖分析では、両F2集団とも組換価1%以下、地図距離1cM以下とほぼ同じ値が得られ、ふ色遺伝子Rg1Glu-B3 座の遺伝子は約0.8cMの地図距離で密接に連鎖している(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  ふ色はGlu-B3 座遺伝子型の選抜に使用できる簡便で有効なマーカーである。


[具体的データ]

表1 東山40号(ふ色褐,Glu-B3g )/ニシノカオリ(白,Glu-B3d )のF2集団のふ色及びGlu-B3 座遺伝子型の分離状況
表2 関東107号(ふ色白,Glu-B3g )/はつほこむぎ(褐,Glu-B3i )のF2集団のふ色及びGlu-B3 座遺伝子型の分離状況
表3 両遺伝子の組換価及び地図距離

[その他]
研究課題名:温暖地西部の多湿水田輪換畑向け早生、良質の小麦品種の育成、
                  東海地域における小麦の梅雨前収穫作型の開発と高品質生産の実現
予算区分:指定試験事業、農林水産研究高度化事業
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:辻孝子、藤井潔、吉田朋史、池田達哉(近中四農研)

目次へ戻る