施設スイートピーに発生した可給態リン酸過剰による葉身白化症状


[要約]
施設栽培スイートピーで、開花が始まる12月以降に下位葉から葉身が白化し、やがて上位葉にまで進展する症状が見られている。この原因は土壌の可給態リン酸過剰である。リン酸過剰畑では可給態リン酸を指標とした改善が必要である。

[キーワード]スイートピー、リン酸過剰症、葉身白化

[担当]神奈川農技セ・農業環境研究部
[代表連絡先]電話:0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  施設栽培スイートピーで、開花が始まる12月以降に下位葉から白化が始まり、激しくなると上位葉にまで白化が進展する症状が、数年前から見られている。発症株は花柄が短くなるため、切り花品質が低下し現地で問題となっている。そこでこの原因を解明する。

[成果の内容・特徴]
1. 現地での発症は開花が始まる12月頃から始まり、栽培が終了する4月まで続く。下位葉から葉身の白化が始まり、徐々に上位葉に進展する。外見上はカリ欠乏にも類似している。発症株は花柄が短くなり、切り花品質が低下する(図1)。
2. 現地の発症株及び未発症株の葉身、葉柄、茎の養分含量を比較すると、発症株は全ての部位で、リン含量が未発症株の約2倍の値を示す。カリ及びその他の元素濃度には差が見られない(表1)。
3. 現地ハウス土壌の分析結果では、可給態リン酸濃度が発症株周辺土壌、未発症株周辺土壌ともに高濃度であるが、両土壌を比較すると、発症株周辺がより高濃度である。カリ飽和度は発症土壌、未発症土壌とも診断基準の上限値付近である。その他の項目はほぼ適正な値である(表2)。
4. 現地土壌(褐色低地土)を用いたポット試験の結果、発症土壌、未発症土壌とも、リン酸を増肥(重焼燐および過石を併用し、リン酸成分で200mg/100gおよび300mg/100g相当をポット土壌に施肥)することによって、白化症状はさらに助長される。また茎葉部リン含量も高まる。発症土壌を非耕地土壌(火山灰土)で2倍に希釈した処理区は、白化症状の発生が最も少なく、生育良好となる(表3)。
5. 養液栽培でリンを増施した場合、園試処方の5倍濃度(Pとして200mg/L)で3週間経過しても症状は現れず、25倍濃度(1000mg/L)に高めて1週間後から徐々に発症し、2週間後からは顕著に白化症状が現れ、現地と同様の症状が再現される(図1)。
6. 2006年に土壌診断を行った県内スイートピー117圃場の可給態リン酸濃度(mg/100g)は、平均値158,最大値520,最小値23であった。また300mg/100gを超える高濃度圃場が15圃場あり、白化症状はこれらの圃場の一部で見られている。

[成果の活用面・留意点]
1. 白化症状の直接の原因は可給態リン酸過剰と考えられるが、現地圃場での発症にはばらつきがあり、リン酸濃度が高い圃場でも発症しない株も見られる。作土の可給態リン酸濃度以外の、白化症の発生を助長する、他の誘因についても検討する必要がある。
2. 可給態リン酸含量が県診断基準値(40-80mg/100g)を上回る場合は、リン酸施肥は不要である。リン酸含量がとくに高い場合には、客土、下層土との混層耕、天地返し等の低減対策を行う必要がある。


[具体的データ]

図1 スイートピーに発生した葉の白化症状(左:現地での発生、中:リン酸を過剰施肥したポット栽培での発生、右:リン酸を過剰施肥した水耕栽培での発生)
表1 現地植物体元素濃度(圃場内の未発症、発症、各10株平均値)2006/1/
表2 現地土壌の化学性(未発症株および発症株周辺各5地点平均値)2006/4/
表3 ポット試験生育調査(1区3ポット×3株=9株平均値)2006/12/6

[その他]
研究課題名:地力保全対策等診断調査 作物生理障害診断調査
予算区分:県単
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:岡本保、山田裕

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