海岸地帯に位置する砂地野菜露地畑では地下水中での脱窒活性が極めて高い


[要約]
海岸地帯に位置する砂地野菜露地畑では地下水中の単位面積あたりの脱窒活性が極めて高く、地下水面以浅の50〜500倍である。脱窒活性は9〜10月に最大値を示し、冬期に低下する年変動を示す。

[キーワード]脱窒、硝酸性窒素、砂地野菜露地畑、地下水位

[担当]静岡農林研・生産環境部
[代表連絡先]電話:0538-36-1556
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、共通基盤・土壌肥料
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  多くの研究例から地下水位の高い河畔林地帯では、地下水中において脱窒がさかんに行われていることが明らかになっている。比較的地下水位が高くなる海岸地帯の砂丘未熟土壌においても同様に脱窒が生じていることが類推されるが、詳細は分かっていない。砂丘未熟土壌では硝酸性窒素の溶脱が著しく、同土壌での脱窒特性を把握することは環境負荷低減の観点から重要である。ここでは原位置での測定によって、砂地野菜露地畑地帯における深さ200cmまでの脱窒活性の年変動を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 海岸地帯に位置する砂地野菜露地畑では年間を通じてほ場の地下水位は50〜100cmで推移し、降水量の多い夏期に水位が上昇する傾向がある(図1)。アセチレン阻害法による原位置での脱窒活性を、不飽和土壌ではNishioらの方法1)、地下水中ではTodaらの方法2)で測定すると、脱窒活性は年間のどの時期においても地下水面以深において顕著に高い値となる。
   1) Nishio et al., 2002, Soil Sci. Plant Nutri., 48, 307
   2) Toda et al., 2002, Nutrient Cycling Agroecosystems, 63, 167
2. 深さ200cmまでの脱窒活性を、各深さの測定値を積算して求めると、脱窒活性は夏期に徐々に高まり9〜10月に最大値に達し、その後減少する(図2)。この傾向は地下水の地温の推移と傾向が類似している。最大値と最小値から計算すると地下水面以浅と地下水面以深の脱窒活性はそれぞれ0.3〜1.4、77〜150gN/m2/yとなり、地下水面以深の脱窒活性は地下水面以浅の50〜500倍となる。
3. 地下水の硝酸態と亜硝酸態の窒素の合計濃度は0.1〜38mgN/Lの範囲に分布する。周辺の降水・かん水・営農活動に対応して増減すると考えられるが、脱窒活性の高い8〜10月に濃度低下が認められる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 脱窒を利用した水質浄化対策技術を開発するための基礎資料として活用できる。
2. 地下水採取装置の挿入によって土壌がかく乱され、脱窒速度が過大評価されることがある。従ってここで示された脱窒活性とは、原位置環境下におけるかく乱の影響を含んだ脱窒速度である。
3. 本試験は、地岸線から1km内陸に位置し、海水面からの平均地下水面高度が450cmであり、潮汐の影響が認められない砂地露地畑で得られたデータである。


[具体的データ]

図1 深さ200cm までの脱窒活性と地下水位
図2 脱窒活性および地下水面以深の水温の年間変動と営農作業 図3 地下水の硝酸態と亜硝酸態窒素濃度の合計値の年変動

[その他]
研究課題名:砂地野菜畑における畜産由来有機性資源の循環利用に伴う
                  環境負荷物質の動態解明と環境負荷低減技術の開発
予算区分:指定試験
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:高橋智紀、福島 務

目次へ戻る