ナシ病害虫防除に使用するスピード・スプレーヤの農薬飛散低減法


[要約]
ナシ病害虫防除にスピード・スプレーヤ(以下S・Sとする)を使用して農薬散布を実施する場合、「S・Sの送風量の半減」、「飛散低減ノズルの装着」、「ネットの展張」を単独もしくは組み合わせることにより、防除効果を低下させずに農薬の飛散を低減できる。

[キーワード]ナシ、スピード・スプレーヤ、農薬飛散、飛散低減ノズル、ネット

[担当]茨城農総セ園研・病虫研究室
[代表連絡先]電話:0299-45-8342
[区分]関東東北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・普及
 
[背景・ねらい]
  ナシで病害虫防除にS・Sを使用した場合、隣接して栽培されている野菜等の他作物への農薬の飛散(ドリフト)が懸念されている。そこで、S・Sの送風量半減、飛散低減ノズルの装着および遮蔽物としてネットの活用による農薬飛散低減法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. ナシ棚の側面や天井にネットを展張せず、コーンノズルと送風量を慣行で散布した時の対照区の相対付着量を、垂直方向、水平方向とも100とすると、棚側面に展張するネットを4mm目(3.5m高)および2mm目(3m高)の2重ネットとし、棚の天井に展張するネットとして9mmクロス目(多目的防災網)を設置し、飛散低減ノズル(DLコーンノズル)を用いると相対付着量は5.7、7.9になり、農薬飛散低減効果が高い(表1)。
2. 茨城県赤ナシ無袋栽培病害虫防除暦に準じた防除を実施した場合、黒星病、輪紋病に対する防除効果は、飛散低減ノズル(DLコーンノズル)と慣行のコーンノズルおよび慣行の465立方メートル/minとその約半分(260立方メートル/min)の送風量の間で防除効果に差は認められない(表2)。
3. 現地ナシ園において、飛散防止用ネット(散防紗:N社製)、0.4mm目ネット、防風垣、無遮蔽の農薬飛散状況を比較すると、飛散防止用ネットによる農薬飛散低減効果が最も高い(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. アブラムシ類、ハダニ類の発生が少発生の場合、飛散低減ノズル(DLコーンノズル)の使用、送風量の半減(260立方メートル/min)による散布は、慣行の散布と比較して防除効果に差は認められないが、多発生が予測される場合は慣行の散布と比較し、防除効果が低下する恐れがあるので初期防除を徹底する。
2. できるだけ風のない時間帯に散布を実施する。
3. 簡易な風見鶏を設置して、風向きに注意して散布を実施する。
4. 園周縁部の散布では園外飛散が懸念される側のノズルを止めて散布を行う。
5. ネットの価格は、2m幅の50mロール単位で、1m当たり、4mm目ネットが120円、2mm目ネットが220円、散防紗が280円である。
6. 飛散低減ノズル(DLコーンノズル)の価格は、1セット(16個)で27,000円であるが、アタッチメントが必要なS・Sでは、さらに部品代として48,000円(1個当たり3,000円)必要となる。


[具体的データ]

表1 ナシのS・S散布時における飛散低減ノズル・送風量・ネットの飛散低減効果
表2 S ・S のノズルの種類と異なる送風量の組み合わせにおける黒星病と輪紋病に対する防除効果
表3 ナシのS・S散布時における遮蔽物の違いによる農薬飛散低減効果(現地圃場)

[その他]
研究課題名:農薬飛散防止技術の確立
予算区分:国補
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:冨田恭範、西宮智美、鹿島哲郎、宮本拓也、小河原孝司、草野尚雄、長塚久
発表論文等:冨田恭範ら(2007)関東東山病害虫研究会報54:187-189

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