花蕾に発症するブロッコリーべと病の総合防除


[要約]
冬どり栽培のブロッコリーの花蕾に発症するブロッコリーべと病の防除には、耐病性品種を利用し、堆肥や窒素の多量施用を避けた施肥を行い、べと病に感染しやすい10月〜11月にマンゼブ・メタラキシル水和剤を散布する体系的な総合防除が有効である。

[キーワード]ブロッコリー、ブロッコリーべと病、花蕾、総合防除、耐病性品種、土壌・施肥管理、薬剤散布

[担当]埼玉農総研・園芸研究所・生産環境担当
[代表連絡先]電話:0480-21-1113
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  埼玉県北部の秋冬どりブロッコリーでべと病菌による花蕾の黒褐変症状が多発し、深刻な問題となった。しかし、本病の感染時期及び発病と品種や栽培条件等との関係が不明で、的確な防除方法が明らかになっていない。
  そこで、花蕾に発症するべと病の発生生態及び多発条件を解明するとともに、耐病性品種の利用、肥培管理等の耕種的防除と薬剤散布を組合せた総合的な防除体系を確立しようとする。

[成果の内容・特徴]
1. 冬どり栽培において、葉の発病は10月下旬〜11月上旬がピークとなり、その後出蕾する花蕾に感染する。花蕾の発病は、頻繁に頭上灌水したうえ不織布で多湿に保った管理で増加することから、葉の発病時期に連続した降雨等で植物体が長時間濡れる条件下で助長される(図1)。
2. 産地で花蕾発病の多かった品種「ハートランド」に比べ、年内穫り品種では「沢ゆたか」、「緑嶺」、年内〜年明け穫り品種では「グリーンベール」、「直緑93号」、「盛緑180」が花蕾発病を観察せず耐病性とみられ(表1)、このうち「沢ゆたか」、「グリーンベール」は商品性からも実用性が高い。
3. ブロッコリーの葉及び花蕾に発病するべと病は窒素増施、堆肥を多投入した栽培条件下では多発しやすい。しかし、作付前にソルゴーの栽培・すき込みを行って窒素の肥効を制御することで発病を軽減できる(図2)。
4. 11月から12月に収穫となる作型では、葉の発病の主要な感染時期の10月に薬剤防除を行うと花蕾発病が抑制され、特にマンゼブ・メタラキシル水和剤(ブロッコリーべと病を対象に農薬登録済み)の効果が高い(表2)。
5. 花蕾に発病するブロッコリーべと病の防除には、耐病性品種を選択利用し、ほ場への窒素及び堆肥の過剰施用を控える耕種的対策に加え、出蕾前の葉の感染時期に浸透性のある有効薬剤の散布を行う総合防除が効果的である。

[成果の活用面・留意点]
1. 前年多発したほ場への連作、過度の密植も多発の助長要因になるので併せて避ける必要がある。
2. べと病の花蕾での発病は収穫時期が11月〜12月となる作型に最も多いが、1月〜3月に収穫する作型にも発生することがあり、この作型の場合は11月にも薬剤防除を行う。
3. 薬剤防除は、薬液が葉裏までよく付着するよう、茎葉が繁茂する前から開始する。


[具体的データ]

図1  植物体の濡れ状態が発病に及ぼす影響(8月11日播種・9月6日定植、10月30日接種) 図2 堆肥多投入・緑肥栽培が発病に及ぼす影響(8月11日播種・9月22日定植)
表1 べと病に対するブロッコリー品種の発病の差異
表2 ブロッコリーべと病に対する薬剤防除効果

[その他]
研究課題名:ブロッコリー・ホウレンソウべと病の緊急防除技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2005〜2006年度
研究担当者:峯岸直子、野田聡、印南ゆかり、武田正人、小林延子

目次へ戻る